【重要】《不具合のお知らせ》:旅立ちの村の井戸の前で4748回ヘッドスライディングした後、3時間2分16秒間、西方向を向いていると、魔王が弱体化した状態で、井戸にハマった状態で出現するようです。

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「しかし冒険者様。私共はまだ大きな問題を抱えています」 まるで申し訳なさそうな仕草で、私の様子を伺いながら話かける村長らしき人物。 お前の考えている事など、私は全てお見通しだ。 問題というのは、この村を守るための人間が居ない事だろう。 ここは衛兵が居ないため、無法地帯のままだ。 そこで私を用心棒として村で雇いたい、そんな所だろう。 「良いだろう。この村が安全になるまでの期間、私が用心棒を努めよう。 それに金銭等の報酬は不要だ。 (どうせ山賊から全て奪われて、1ゴールドも持っていないだろうしな) しかし1つ条件を提示したい」 私は本当にどうかしている。 このようなNPC共相手に同情など…。 そのため、私は別の理由を考えたのだ。 ここはアリス・オンラインの誰もが最初に訪れる村。 他の初心者冒険者が、いつ訪れてもおかしくはない場所なのだ。 いくらこの地域周辺が、低レベルの雑魚敵共しか居ないと言っても、初心者が村に来た瞬間、敵と戦闘になるなんてのは、ゲームとして酷いものだ。そんなクソゲーはバグゲー同然の代物と言ってよいだろう。 オンラインMMORPGに慣れていないプレイヤーならば、操作がわからないため、すぐに死んでしまうかもしれん。 そう、私は彼らNPC共に同情する気は全く無く、人間である初心者プレイヤー達のために、この村の安全を確保するのだ。 元はと言えば、この私がバグを悪用して引き起こした事だ。 ここは初心者プレイヤーのため、更なるバグを悪用し、なんとか村の治安を立て直さなければな。 その程度の事であれば、不具合チート勇者の私からすれば造作もない。 「あ!、ありがとうございます!冒険者様!話が早くて大変助かり恐縮でございます!。 それで条件というのは?」 村長らしき人物が手を擦りながら聞いてきた。 用心棒を努める以外に、私がこの村で為すべき事は1つだけ。魔王の召喚、そして討伐だ。 召喚と(たい)それた事を口にしたが、実際はバグを悪用したチートを使用し、この村に現れるはずもない魔王を、強制的に出現させるのだ。 出現方法は、この村の井戸の前で4748回ヘッドスライディングを行い、その後3時間2分16秒間西方向を向き続ける、それだけだ。 実はこのバグは、アリス・オンライン ベータ版で1番酷いバグとしてネタになった事で有名だ。 恐らくベータ版をプレイしたユーザーは、ほとんど知っているバグだろう。 そして実は、ベータ版で発見されたバグでは、魔王を強制的に表示する事は確認出来たのだが、魔王を弱体化した状態で出現させる方法を発見出来たテストプレイヤー達は、1名たりとも存在しなかった。 そのため魔王を出現させたには良いが、最初に訪れる村のため、低レベルでは勝てないのが当たり前だ。 しかもこのバグは、プレイヤーのレベルが10以上になった瞬間、バグを出そうと思って魔王を出現させようとしても、バグは無効となるのだ。 つまり、レベル10以上では再現不可能なバグだ。 しかし私は更にその先へ進める魔王バグを発見したのだ。それは特定の回数ヘッドスライディングをする。ここまでは既存のやり方と同じだ、そしてこの方法でも魔王は出現する。 そこで私はヘッドスライディングを4748回した後、西の方向にキャラクターを向かせたのだ。それも長時間。 実はたまたまゲーム中にキャラクターを放置していただけである。 するとなんという事か、魔王の出現位置が変わったのだ。 既存のバグでは魔王は井戸の前に出現していたのだが、なんと私の方法だと、魔王は井戸にすっぽりとハマったまま身動きが取れないまま、こちらが安全な距離から一方的にダメージを与え続けれる。 つまり、魔王をハメれる訳なのだ。
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