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「今のは魔法ではない。そんな事もわからないのか?。害虫共」
私は茂みから立ち上がり、山賊達に姿を見せるとそう言った。
「誰だてめぇは!?」
親玉が私に向かって叫ぶ。
子分達は私を取り囲んで、皆武器を突き付けて来た。
「害虫供に名乗る名など無い。バグであり、不具合なのは私だけでもうたくさんだ。
今から私はお前達を害虫駆除する。
覚悟しろ害虫共」
私はそう言うと、誰にも当たるはずもない場所で素手の格闘攻撃を行う。
そして格闘攻撃のモーションが終了するまでに、装備ウィンドウを3つ開くと、鉄の剣を3つ装備した。
そう、これは意図的に不具合を使用して行ったチート行為だ。
このバグを悪用すれば、本来1つしか装備出来ない片手剣を複数装備出来る。
私は自分の腹に3本の剣が、ぶっ刺さった状態を確認すると、素手状態のままファイティングポーズをする。
「ほざけーーー!!!!」
親玉の大声と共に子分達が突撃して来た。
私は山賊達の攻撃を回避しながら、素手攻撃のパンチを確実に入れて行く。
子分達は私が1パン入れただけで、血を流し次々と倒れて行く。
1パンなのに、まるで斬撃を複数箇所受けたような大怪我をするのは、剣を3本装備したバグの効果だ。
確かに私はパンチ攻撃しかしていないが、現時点の装備は、鉄の剣3本となっているため、1度の1パンチヒットで、バグの誤ったダメージ算出計算処理を通過する事により、斬撃ダメージが3回分行われた事と同じ意味になるのだ。
「ぐはあああっ!」
バタッ…
「ぬうおおおああっ!」
ドサッ…
雑魚共は次々と倒れて行き、残りの人数は半分程となる。
親玉は戦況を見て勝ち負けの判断がついたのか、子分達に撤退の命令を出す。
「ちっ!。あいつの格闘攻撃を見て理解した。拳を何かの魔法で大幅に強化してやがる………。
あのレベルの魔術師はヤバイな。
お前ら撤退だ!!!!撤退ーーーっ!!!」
いや、私の格闘攻撃は強化魔法などという大それたものではなくチートなのだが。まあいい。お前達山賊のおかげで少しばかりの経験値と、大量の盗品アイテムが手に入った。
これぞ1番効率の良いバグを使った山賊の狩り方だ。
まあ、狩の効率と言っても大量のアイテムを狙う事が大きな目的ではあったが。
「これで勝ったと思うなよーー!!!」
山賊達はお決まりのセリフを言うと、早々に逃げて行った。
邪魔者は居なくなった所で、私は拘束された村人達の縄を解いてやる。
「本当に、本当にありがとうございます!。我らが救世主様!。なんとお礼を申し上げたらよいのか…」
村の村長らしき人物が私にそう言った。
私は好きでお前達を助けた訳ではない。
これは私の気まぐれがたまたま生んだ1つの結果に過ぎないのだ。
もしかすれば違う結果になっていたかもしれない。
大勢の村人の死者が出たかもしれない。
私が敵に寝返って、犯罪者としてこの世界で生きる事を選んだかもしれないというのにだ。
「礼ならもうたくさん貰った。だから構わないさ」
私はそう言うと、村長らしき人物は驚いた。
「一体何をあなた様に差し上げたのでしょうか!?。
まさか村の誰かが雇っている傭兵様でしょうか?。既に報酬は受け取り済みと?」
私はそれを否定し、たまたま通りかかった冒険者と伝えた。
報酬は山賊を倒して手に入れたドロップアイテムと経験値という事にしておいた。
あれらの盗品は、その時点では山賊供の所有物であったため、それをドロップアイテムとして私が拾った。
別に私が盗んだわけでもなく、嘘もついていないと思う。
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