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「ん……。ライカ。あんな大人には、なっちゃダメ」
自分の膝の上に、ちょこんと座っているライカの頭を撫でながら、アリスは呟いた。
ごもっともな発言だ。見苦しい物を見せてしまったな。
私はそのまま咳こむと、今後の方針について話始める。
「まずはその悪ガキを村に帰らせないとな。
母親も心配している事だろう。
というか。何故こんな場所で呑気にキャンプなどしているのだ?。
時刻は夜だろうと、1時間も歩けば村だ。
キャンプなどしなくとも、少し歩けば、村の宿で休めるではないか」
私がそう言うと、ヒカリは溜息をして、両眼に刺さったニンジンをスポンッ!、と抜くと、そのままモグモグと食べて言った。
「あむあむあむ…。ゴクンッ。馬鹿ねえ、アサヒ。夜の旅がどれだけ危険な事なのか、わからないの?。
夜はモンスターが凶暴になるし、例のあいつだって居るかもしれないのよ?。
ここの安全だって確保するの、大変だったのよ?」
ヒカリが言った、「例のあいつ」とは、恐らく、アリス・オンラインで有名な、真夜中の初見殺しとして恐れられているモンスターである、チェシャ・ナイトストーカーの事だろう。
奴は夜にしか現れないモンスターで、私達が今居る、この地域にも生息していたはずだ。
私は周辺地域ウィンドウを表示し、そこからモンスター生息情報ウィンドウを表示して、奴がいるか確認した。
そしてやはり、チェシャ・ナイトストーカーが載っていた。
「夜中に出るチェシャ猫は居るみたいだな。おまえはこんな雑魚に怖がってるのか?。モンスターの習性を知っていれば、問題なかろう」
「嫌よ!。もしあいつの攻撃で、心臓潰されたらどうすんのよ!?。
一撃で死ぬのよ!?。そんなリスクまで背負って夜道を歩くなんて、絶対に嫌!」
そう、ヒカリの言う通り、奴の攻撃は一撃だ。背後から背中をズサリと刺して、胴体を貫通させる。
貫通させた物の正体は、奴の腕だ。
貫通した途端、血塗れの長い爪が見える。
その手に握られているのは、心臓だ。
そして奴は、ドクドクと脈打つ心臓を、持ち主の本人に見せると、グシャリと音を立たせて、潰すのだ。
こうして奴の殺し方を見ると、かなり悪趣味な性格のモンスターである事は間違いない。
だが、アリス・オンラインには、こういう酷い死に方を要求してくる敵やトラップは意外にも多い。
元々のゲームの開発コンセプトが、ダークファンタジーであったため、グロい死に方が多いのも、普通なのだ。
まあ、私はそんなヘマをやらかす事など、絶対にないだろうがな。
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