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「ふんっ。ヒカリ、おまえがチキンだと言う事は理解した。いくらやり直しが許されない世界だからと言って、少し慎重すぎではないか?。
それに奴の攻撃が一撃と言っても、胴体を貫通させない程の防御力があれば、なんて事はない。おまえのレベルの防御力なら、ダメージが入る事はないだろう」
「あんたのレベルだとまずいって言ってんのよー!(怒)
とにかく今日はキャンプよ!キャンプ!。
まあ…確かに、ライカちゃんのお母さんは心配してるでしょうね。
あたしだって出来る事なら早くこの子を母親に会わせてあげたいわ。
でも…。それこそ今無理をして、夜道を歩いている間にライカちゃんの身に何かあったら大変よ!」
ガキの身を心配するのは、まあ良いとして、また私の心配か……。
あんな雑魚など、バグが無くても倒す事は出来ないが、私ならば奴の全ての攻撃を回避して村まで無事辿り着く事だって容易だ。
あいつは、一撃を繰り出す前に獲物の動きを封じるのだ。
獲物の動きを封じさせるためには、獲物と目を合わせる必要がある。
そのため夜道を歩いていて、奴に遭遇する場合、まず始めに夜に溶け込んだチェシャ・ナイトストーカーは、自身の目だけを私達の視界に出現させる。
奴はモンスターの特性上、闇の中に姿を消す事が出来るが、目だけは隠せない。
そして目を出現させる時、奴は気付かれないように、瞼をゆっくりと開くのだ。
全て瞼が開き切った状態の目を見た場合、それを見た対象はフリーズ状態となり、身動きが取れなくなる。
つまり、奴に注意して目の瞼が開き切る前に別の方向を向くか、自分が目を瞑るかして、相手の目を見なければ背後を取られる心配も、攻撃を受けるリスクも少なくなる。
それに奴は、ただでさえ相手を行動不能にし、しかもその上で自分の姿を隠したままの状態でしか攻撃する事しか出来ない臆病な性格のモンスターなのだから。
しっかり習性を把握し攻略する事が出来れば、初心者も雑魚に分類してしまう程のモンスターなのだ。
「わかったわかった……。はぁ…。
であれば、夜道を歩かずに、村まで移動出来れば良いのだろう?」
私がこう言うとどうせおまえは憤慨し、またバグを使うつもりだとか言うのだろう……。
「はあ!?。そんな方法があればとっくにそうしているわよ!。
アサヒ?、あんたまたバグを使って何かやるつもりでしょー!!。コラァー!!(怒)」
ヒカリはそう言うとプンプンして、私の頭をポコポコと叩き始める。
「期待に答えられなくてすまないな。
先程のグリフォン戦の時に、おまえに内緒で既にバグは使用済だ」
ヒカリはそれを聞いて相変わらず怒ったまま、何のバグを使ったのか私に何度も問い正してきた。
それはつい3時間程前の出来事である。その時は夕暮れで、グリフォン共も私達の人間大砲祭りに呆れて、立ち去る者が出始めた頃の時であった。
私はこのままでは全てのグリフォン共を倒す事も叶わなく、しまいには全て逃してしまうと思い、なんとか奴らの1匹でも、倒す事は出来なくとも、テイムする事は出来ないかと、考えたのだ。
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