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少し歩いていると、私の右足にトラバサミが噛み付いた。
私のような低レベルの場合は、足が切断されるのだが…。バグを悪用して、あり得ん程高くなったこの防御力だ。
私の足に噛み付いたトラバサミの刃の方が、フニャフニャに潰れた。
そして、役目を終えた、邪魔なそれを蹴り飛ばす。
ガシャン!
「ひ!、ひいいっ!。化け物だああ!」
すると、その様子を見ていた者が居たのか、男の悲鳴が背後にある茂みの方から聞こえた。
(ふんっ……。早速密猟者が、私を尾行していたみたいだな)
あの様子じゃ、何の問題にもならないだろう。雑魚は大人しく、私から遠ざかるべきだ。
間違っても攻撃して来るような、そんな命を粗末にするような行動には出るなよ?
そして私は、逃げる密猟者の足音を鼻で笑った。
トラップの破壊と、邪魔者は居なくなった所で、誘き寄せたグリフォンが、トラバサミに掛かっていないか、確認しに行く。
これから行うテイムバグの第1歩が、グリフォンをトラバサミにかからせる事だ。
このエリアは密猟者の仕掛けたトラバサミで溢れている。
それに地形も木々に覆われ、狭い道ばかりとなっているため、翼を広げて飛び立てるだけのスペースはない。つまり、奴はこの森の中で飛ぶ事は出来ないのだ。
故に、テイムバグを成功させやすい絶好のエリアなのだ。
「ピギャ!、グォオオオオオ!!!」
早速、奴は罠にかかったようだ。
少し離れた場所からグリフォンの悲鳴が聞こえた。
そして私は悲鳴が聞こえた方向を向き、歩き始める。
そしてグリフォンの場所に到着し、罠で身動きが取れないグリフォンを確認する。
奴はトラバサミから抜け出すべく、暴れ続けている。
クチバシで前足に噛み付いているトラバサミを突き、破壊しようと試みるが、あの罠は大型の動物にも対応しているため、重くて丈夫だ。
しかし私は念のため、奴がもがいてる隙に、近くのトラバサミを見つけて、トラップ解除コマンドを実行する。
解除を実行した場合、トラバサミは自分の所有アイテムとなり、アイテムボックスに転送される。
私はトラバサミを手に入れると、もがき苦しみ、ジタバタと暴れている最中のグリフォンの後ろ足を狙って、トラバサミを放り投げる。
ドサッ!
バッコンッ!!!
「ピギャ!グォオオオ!」
奴は前足ばかりに気を取られていたためか、ジタバタと動き回る後ろ足に対しては、罠に警戒する事はなく、トラバサミはすぐにその足に噛み付く事となった。
再びグリフォンは大きな悲鳴を上げた。
もうこうなればこっちのものである。
そこで私は隠れていた茂みから、奴の前に姿を現した。
「私のトラバサミは気に入って貰えたようだな」
グリフォンの目を見て、上から目線で言う私。
当然グリフォンは怒り狂い、前足と後ろ足を引きずってまで、私に近寄ろうと試る。
そしてグリフォンは、ゆっくりともがきながら、私の後を追う。
トラバサミが更にたくさん仕掛けられている場所に誘導されているとは知らずに。
くははは!。いいぞ、その調子だ!。私を憎め!。今すぐ殺してやりたい程にな!。
でなければこのテイムバグは成功しない。
このグリフォンも、途中で諦めて力尽きないで、最後の最後まで私を殺す事を諦めない、それくらい根気強い奴だと良いんだが。
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