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それから数分が経った。私はグリフォンを罠の多い場所まで誘導する事に成功した。
私を深追いしてしまったグリフォンの方といえば、後ろ足と前足の計4本の足全てに、トラバサミが噛み付いている状態となっている。
ここは落ち葉が地面に数センチ程積もっているため、まず目視ではトラップの場所は確認出来ない。
私も何度か噛まれたが、この防御力だから、トラバサミの方が使い物にならなくなるくらいだ。
普通は事前に罠の位置を把握しながらやるのだが、このチート防御力があるため、そのような面倒な仕込みは不要だ。
そしてグリフォンはとうとう倒れる。
全ての足からは出血しており、長い間続いた痛みに耐えらなくなったのか、または、暴れるだけの体力がなくなったのか。
「グォオオ……グォオオ…」
痛みと疲労が相当身体に負担だったのか、呼吸が荒い。
ここで私のテイムバグの下準備は全て整った。後は仕上げだ。
「くははははは!。どうした!、グリフォンよ!。貴様はその程度か!?」
「グォオオオ!……」
何か必死に答えたようだが、起き上がる気力はもうないようだ。
そして私は、グリフォンの後ろ足にそっと近づき、奴が本当に暴れる気力が無いか、指でツンツンして確かめた。
「・・・・・」
ふむ、大丈夫なようだな。では仕上げを始めるとするか。
いよいよこのゲームの残念なバグの登場だ。
私はグリフォンの後ろ足に噛み付いている、トラップに「トラップ解除」コマンドを実行する。
するとなんという事か、意味不明なメッセージが表示されるのだ。解除前に表示されたメッセージは以下だ。
『密猟者の罠に捕まったモンスター「 undefine 」を発見しました!。
助けてあげますか?
→ ・はい ・いいえ』
よくわからない事となっているが、つまりバグっているのだ。
このウィンドウは本来、このエリアに生息するモンスターを想定して出現するメッセージウィンドウだが、私のように、エリア外の遠くからモンスターを誘き寄せた場合も、表示されてしまうのだ。
そしてこのウィンドウに含まれる文字の「undefine」とは、未定義という意味で、本来は「グリフォン」という文字が入るはずだが、私がゲームシステムの想定外のモンスターをこんな場所まで連れて来てしまったがため、ゲームシステムが、この機能のために用意されたモンスター名が存在しなかったため、未定義といった文字が表示されてしまったのだ。
ここで「はい」を選択すると、救出したモンスターの好感度が上昇する。
この好感度が一定まで上がると、テイム成功。つまりモンスターを仲間に出来るのだ。
そして私は「はい」を選んだ瞬間、入手したトラバサミをすぐに元の位置に設置する。すると、再びトラバサミが、グリフォンの足に噛みつくのだ。
「ピギャ!、グォオオオ!!!」
まだ叫ぶだけの気力はあったようだ。
そして私は、グリフォンの好感度がMAXになるまで、何度もトラバサミを設置し、何度もトラバサミを解除した。
普通ならば、こんな酷い仕打ちを受けたグリフォンが、私のペットになるはずがない。
寧ろ、私を憎む事だろう。
しかし、例え強いモンスターのグリフォンであろうと、このゲームに存在するモンスター達は、アリス・オンラインのゲームルールに従わなければならない。
テイムもその1つだ。
このゲームのルールから逃れる術は、バグを使うか、システムの抜け道を通らなければならない。
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