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「ヒカリ………こんな場所に居たのか。その、さっきはすまなかった」
ヒカリは私の謝罪を聞いて、しゃがんだまま、木のぼっこ【盗品】を装備していて、地面の土を、ぐりぐりと音を立てて擦っていた。
あれでいじけているつもりなのだろうか。
そしてその盗品アイテムは、恐らく私が、山賊達から奪った時手に入れた武器アイテムで、私の知らない間にアイテムボックスから取ったのだろう。
それは全く価値の無いアイテムだから、勝手に持ち出して良いとは思うが、今度からは、希少価値のあるアイテムにはロックをかけておこう。
それはそれとして、ヒカリは私に盗品アイテムを使用した所を見られてしまった。
そのため、彼女のカルマはどんどん減って行っている。
「ううー……。ぐりぐりぐり」
「おいヒカリ、気は確かか!?。盗品アイテムを使用した所を私に見られると、おまえは善良なプレイヤーではなくなってしまうぞ?」
と言った所で遅かった。彼女のカルマは1ランク下がって、カルマネームが「一般人」から「こそ泥」に変わってしまった。
『犯罪行為を目撃されたため、ヒカリは「こそ泥」になりました』
ヒカリの目の前に警告画面が表示される。
「あわわわわ!!!。」
ヒカリは慌てて、盗品を投げ捨てた。
何も投げ捨てなくとも、持ち主の私に盗品を返せば、カルマは上昇するのに、何故こう、おまえは悪い方向に走ってしまうんだ。
そして私はそっと、木のぼっこ【盗品】を拾い上げる。
『盗品が持ち主に返還されました。盗品の返還を目撃したヒカリは、一般人に戻りました』
「はぁぁぁ〜…。もー!、びっくりしたじゃない!(怒)。あたし、今機嫌が悪いのよ!。放っておいてくれるかしら!」
「だから今誤っただろう?。私が悪かった、この通りだ」
そう言うと、私はヒカリに再び頭を下げる。
「じゃあ…約束して。もうあたしに内緒でバグを使う事はやめて。
アサヒは確かにバグに詳しいけど、そのバグが抱えているリスクは、実際にゲームプログラムを組んだ、あたしの方が詳しいはずよ。
このゲームのバグが、何に影響を及ぼすのかも、あたしはアサヒより詳しい自信があるんだから。
今度からはちゃんと何をするのか事前に言いなさい?。
本当にそのバグを使って問題ないか、あたしがチェックするから。
それに、あたし、アサヒを真っ向から否定したいわけじゃないわよ?。
ただ本当に危険がないか確認したいだけなの。
ええと…その、バグがダメって訳じゃなくて…ね?。
その…アサヒのバグに助けて貰った事があるのも事実だし……」
ヒカリはそう言うと、顔を赤くしてモジモジする。
要するに、ヒカリのバグチェックを通して、使用すれば問題ないという事だろうか。
無論、そのバグチェックとは、デバッグの事ではなく、そのバグを使用して安全なのか、それとも危険なのかというチェックの意味合いの事を指しているわけで、ゲーム業界に努める私からすると、変に誤解を招く可能性のある言い方となってしまった。
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