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「ウヒョヒョヒョ!!!。チミ達が逃げようとしたら、どうなるか、わかったかな?。
ボキの仲間達は、み〜んな、食欲旺盛でねー!。
まあ、あいつらは、ボキ程ではないけど、チミ達を全員、胃袋に入れるくらいの数は揃っているよ?
それでもまあ、ボキ達にとってみれば、人間なんて、ちっこくて弱い生き物は、おやつにも入らないと思うけどね!。
ウヒョウヒョッ!!ウヒョヒョヒョヒョ!!!」
そう言って、アーク・グリフォンは、両目の眼球を、ぐるんぐるんと回転させた。
・・・・・。
そして、アサヒはその頃、グリ子の様子に異変を感じていた。
「おい、どうしたグリ子!。どうしてそんなに怯えている!」
「ピギャ!グォオッ!!!ピギャグォオオ!!!」
先程からグリ子の様子がおかしい。
この反応は確か、強敵を警戒している時に発生する、グリフォンのエモートだが、私達が向かっているのは旅立ちの村。
あんな何もない平凡な村に、こいつを怯えさせる程の敵は、まず居ないと思うのだが……。
しかし、何が起こってもおかしくない、この世界の事だ。
私の持つ、アリス・オンラインの知識が、この世界では通用しない事もあるだろう。
私は、グリ子を地上へ降ろすと、何かの存在に怯えるグリ子を、ヒカリとアリスの元へ戻るよう命じた。
「グリ子。大丈夫だ、落ち着け。ここからは、私とライカだけで行く。お前はヒカリとアリスの場所へ戻り、彼女達の指示に従え」
私はそう言うと、ペットウィンドウから、グリ子を選択し、ペット所有権のプレイヤー枠に、ヒカリとアリスを加える。
彼女達のメッセージウィンドウにも通知が届く事だろう。
これで彼女達も、グリ子に乗る事や、指示を送る事が出来る。
ついでに彼女達に、到着時刻が少し遅くなる事について、メッセージを送っておく。想定外の事態だ。少し遅くなるかもしれないからな。
そしてメッセージを送った後、寝ているライカを抱き抱え、私は、旅立ちの村へと徒歩で向かった。
・・・・
走り続けて、15分程経った時だ。
無数の光っている何かが見えて来た。
村へは近づいていて、昼頃であれば、あの光の放たれた場所には、旅立ちの村が見えてくるはずだが、こんな真夜中に、なんなのだろうか、あの光は。
私は遠くにあるボヤけていて、よくわからない光の正体の候補を考えてみる。
真夜中の光と言えば………。
人工的な物とは考えにくい。皆この時間は寝ているからな。それに旅立ちの村に、深夜営業の酒場はなかった。
だとすると……。
真夜中の殺し屋、チェシャ・ナイトストーカー共の瞳が、月の光を反射し、通りかかる獲物を待ち伏せしているかだ。
だとするとまずいな……。ここで腹棉をえぐられては困る。コイツを抱えていては、戦えんしな。
私は目を瞑りながら、走り出した。
奴らとは目を合わせなければ、何も問題はない。
「キャアアアアアアアアッ!!!!」
「!?!?」
光の発している方向から、女性の叫び声が聞こえて来た。
こんな場所で真夜中に散歩とは、馬鹿なNPCが居るものだ。
だが、悲鳴の他に、獣の咆哮が聞こえた時、私はそれが、チェシャ・ナイトストーカーの仕業ではない事が、すぐにわかった。
奴は叫んだりしない。静かに殺す事を得意とするモンスターだからな。
(旅立ちの村にも近づいている…。一体何が起こっていると言うのだ。村から逃げて来た人か?)
そして、悲鳴の数と獣の叫び声も次第に数が増えて行く。
もはや嫌な予感しかしない。
私は、チェシャ・ナイトストーカーを警戒する事をやめて、目をゆっくりと開く。
思ったより、村へは近かったようだ。
私が先程見た光の数々は、チェシャ・ナイトストーカーのものではなかった。
旅立ちの村の、家々から出ている灯だった。
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