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あのグリッグスであれば、バグコン2のバグで事足りるだろう。
しかしバグコンとは、妙な名前を付けたな。語源は恐らく、米国防総省が使用しているデフコンから取って来たのだろう。
だが、デフコンは数値が低い程危険な状況を指し示す。
ヒカリはどうやら、元ネタの事をあまり理解していなようだ。
私はグリ子に跨り、空を飛ぶ。
そして、ヒカリとアリスがグリフォン共に敵視されている隙に、魔法防壁から抜け出し、村に向かって、全速全身した。
「行け!、グリ子!」
「ピギャグォオオ!!!」
グリ子は、他のグリフォンに叩き落される危険性を感じたためか、空戦機動を行い、何度もスピンしながら、凄まじい速さで、夜空を切り進む。
ビュビュビュビューーーーッ!!!
「ぬ゛あ゛あ゛〜〜!!!」
流石生きの良いグリフォンをテイムしただけある。
恐らく、周りを飛んでいるグリフォンの中で、グリ子が1番早く飛べるだろう。
私は、グリ子の背中で爆風を受ける中、目を瞑り、叫びながら、しがみついている事しか出来なかった。
そしてゆっくりと速度を落とし始めたグリ子。
私は全身に受ける風が弱くなるとわかると、ゆっくりと目を開けた。
私とグリ子は、既に村の手前を飛んでいた。
「ピギャグオ!!!、ピギャグオ!!!」
グリ子は再び何かに怯えているようだ。
恐らくグリッグスの気配を感じ取ったのだろう。
「グリ子、良くやった。ここまで私を安全に運んだだけでも、おまえは上出来だ。
グリッグスが怖いのであれば、おまえは安全な場所まで下がっていてくれ。
私があいつを害虫駆除してくれる」
そう言うと、私はグリ子から降りて、村の中へと入って行った。
村の中央広場から、グリッグスの声が聞こえて来た。あいつと会うのは、レイドボスのデバッグ以来だな。
奴は妙に気色の悪い特徴的な声だから、その声は、すぐにグリッグスだと理解した。
どうやら奴は、数を数えているようだ。
「イーチッ!。二ーイッ!。サーンッ!」
井戸の前で数を数える………だと?
それはまるで、あの時、私が魔王召喚バグを使おうとしていた、ヘッドスライディングした数を数えていた、あの時みたいではないか。
あいつも何かのバグを使うため、自分の行った何らかの行動を数えているのだろうか。
「ヨーンッ!。ゴオーオッ!。モウイイカアアアアアアイ!?!?………。
ウヒョ!?。ウヒョヒョヒョヒョ!。
返事がまだって事は、隠れていない人間が、まだいるのかな?。
まあいいや!。どんなに上手に隠れたって、ボキの目は誤魔化せない!。ウヒョヒョ!。
……ってあれ、ボキ、何処まで数えたんだっけ?。まあいいや!、じゃあボキ、探し始めるね!?。見つかった人間から順番にボキが喰い殺してあげるからね?ウヒョヒョ!」
5まで数えて忘れるとか、流石グリフォンなだけに、鳥頭と言った所か。
グリッグスはそう言って笑うと、足音を立てて、村の中を索敵して行く。
私は建物に隠れているため、奴の立てる足音でしか、場所を把握する事は出来ない。
奇襲を行える絶好の機会が、私の今から行うバグの前提条件なのだ。
そのため、奴に見つからないよう、今は機会を待つ。
「んーー!?。この家から人間の匂いがするぞ?。ウヒョ!、ウヒョヒョ!」
ドゴーーーンッ!
大きな破壊音が村中に響き渡った。
恐らく、グリッグスの奴が建物を破壊したのだろう。
私は周辺情報ウィンドウを開くと、そこからマップウィンドウを開き、村の全ての建物のステータスを確認する。
今私の前方、10メートルあたりの場所の建物が、破壊オブジェクトとなっている事が確認出来た。破壊されたオブジェクト名は「武器屋」だ。
あの武器屋も、私がこの世界に来てから、悲惨な目に何度も遭って来たな。
まず私に全ての商品を無料で買い占めされたり、山賊の捕虜になった時は、殺されそうになったり、そして今度は家を破壊されてしまった。
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