独白 口にするにはもどかしい想い

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揚げたての軽やかなポテトチップスを皿に盛り付けると淡い黄色の小山が出来上がった。 実を言うと出来上がった時点でほとんど満足しているのだった。作ったポテトチップスを食べることに対する意欲はそこまでなかった。ただ、食べ物を無駄にする訳にはいかないし、作ったからには食べなくちゃいけない。だから、家族やバンドメンバーにお手製ポテトチップスを配って、それで俺の個人的な癖がみんなの知るところとなったのだ。 菜央がこの側から見れば奇妙と言えるであろう時間に付き合ってくれるようになってから、きっちり半分食べるよ、と宣言してから、この作業は食べることで完結するのだなと思うようになった。 随分と影響されたものだ。そんなことをつらつらと思いながらリビングに向かうと、微かにりんごの香りがした。アップルティーを飲むようになったのも菜央の影響だ。みずみずしい香りのする紅茶のお陰で、日常がほんの少し贅沢に感じられるということを知った。
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