九月八日 (曇り)

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九月八日 (曇り)

 どうにもぐずついた天気が続く。今年の夏は、冷夏だそうだ。秋が早いとか。何だか天気が、ぼくの感情に左右されるみたに思える。ま、偶然の一致だろう。天気のことを気にするのは、気分が落ち込んだ時ぐらいだ。  どうやら、先輩の話に少し誇張はあったものの、半分は当たっていた。やっぱり、物足りないということらしい。ぼくが年下であること、そのために彼女がリードしなければならなかったこと、疲れたということだった。グイグイと引っ張る男性が好みだということだ。 「冷却期間をおきましょう」と言われたが、多分駄目だろう。まあしかし、軽い火傷で済みそうだ。しばらくは落ち込むだろうが、その内時間が助けてくれるさ。だけど、忘れ去るまでの間、どうしたらいい。とに角、忘れることだ。  何か、他のことを考えよう。  この間テレビのチャンルネをあちこち切り替えていたら、すごい歌が聞こえてきた。ドン、ドン、ドン! と叫んでる。よくよく聞いていたら、色んな丼を歌うと言うより、叫んでる。ベースを弾いてる女性は、なんと六〇代だって! 驚いたのなんの。あんなにパワフルに動けるんだ、頭なんか振り乱しちゃってさ。  だめだ、やっぱり白々しい。いくら話題を変えても、頭の片隅に残っている。ポッカリと空いた空間は埋まらない。それにしても、こうした場合に大人たちはどうしてきたんだろう。まさか、こんな気持ちがぼくだけ、ということはないだろう。
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