十二月二十四日  (晴れ)

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十二月二十四日  (晴れ)

 何て辛い日だ。仕事って、一体何だってんだい? どうして仕事をする? 生活の糧の為だったら、別に定職を持たなくてもいい。アルバイトでもいいじゃないか。 「デカンショ、デカンショで、半年暮らす。あとの半年は、寝て暮らす」  大体、チコがいけないんだ。折角のイブだというのに、仕事をするなんて。しかも他県だなんて。それに最近は、会社関係の仕事を増やしたりして。創立○○周年記念とかのパーティで、コンパニオンまがいのことをしているんだって。酔っぱらい相手に、歌を歌っても仕方ないじゃないか。からまれたりして、イヤなおもいをするだけだろうに。  いや、わかってる。僕のわがままなんだ、チコには言えないことだ。君だからこそだ。  芸能人さ、チコは。たまの休みは、平日ばかり。僕の休みは、土・日曜日。わかってはいた、時間が合わないことは。それを承知のことだった筈だ。いっそのこと、会社を辞めようか。チコに合わせようか。この間、ホンのわずかな時間を共に過ごしはした。けれど、時間ばかりを気にしているチコは、嫌いだ。 「お正月はゆっくり会えるわよ」って言うチコ。だけど、ぼくは正月にはこの町には居ないんだ。故郷に帰ってしまう。毎年、晦日におふくろが迎えに来る。といって、故郷に来てくれる筈もないチコ。そしてぼくがこの町に帰ってくる頃には、チコはもう居ない。どうしたものか。  もしもそのことを言ったら、チコは困り顔をしただろうか? それとも、ニッコリ笑って「いいわよ、甘えてらっしゃい」と、言っただろうか。怖くて言えなかった。  結局、不機嫌な顔ばかりを見せてしまった。きっと、嫌われただろう。わずかの時間を割いてくれたチコ。ごめんね、チコ。すぐに、手紙を出すよ、「ごめんなさい」と。  あと五日で、仕事も終わり。
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