六月十八日  (晴れ)

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六月十八日  (晴れ)

 あんなに降り続いた雨も、昨夜の内にすっかり降り尽くしたらしく、眩しいばかりに太陽が輝いている。  今日という日は、まったく素晴らしい。何だか、周りのもの全てが輝いて見えた。何もかもが楽しい。道路のあちこちの水たまりの中に映っている、青空。石を蹴ると、ポチャン! と、音を立てて青空が歪んだ。  昨日までのぼく、まるでぼくではないような…。いや、今日のこのぼくがぼくでないのかも。ぼくのことを口先だけの男だ、と決めつけていた先輩でさえも、今日のぼくに驚いていた。 「なんだなんだ。デートか? お前に女友だちなんて居たか?」  大きく目を見開いて、それでも足らずに目をぐるぐる回すような仕草で、最後には大きく両手を広げて「オー・マイ・ゴッド!」だって。  先輩が以前に言っていたように、恋するってことが、これ程に心が弾むものだとは。だけれども、所詮は片思いに過ぎない。いや、憧れか? ただ単に、客席の中の一人にすぎないんだから。いや、このぼくの存在さえ知らないんだ。何てこった!
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