八月一日  (晴れ)

1/1
0人が本棚に入れています
本棚に追加
/23ページ

八月一日  (晴れ)

 ぼくは、文学を愛好する一人の青年だ。当初は、当然のごとく読者だった。今は、創作する側にまわっている。もちろん、少しは本も読んでいる。ぼくの小説狂いは、小学生の時に発する。担任の先生に、作文を誉められたのがきっかけだ。先生の、「日記を書いてみなさい」という一言があった。お母さんに「書いてみなさいよ、そしてお母さんにも読ませてよ」と言われて、その気になりかけかけたけど、先生のひと言で目が覚めたんだ。 「人に言えないようなことを、こっそり書くんのよ。悪口でも良いし、あの子が好きだでもいいし。大人になったときに、そのときのことが甘酸っぱい想い出となって蘇るから」  冗談じゃない、そんなこと。お母さんが読むんだ、書けないよ。そうなんだ、ノートは買ってもらったものの、一ページも書けなかった。  今日、水中見合いなるものを見たた。アクアラングを背負っての見合いらしい。当然しゃべれない。身振り手振りでの会話? 海底にテーブルと椅子を置いていた。キチンと行儀良く座ってのことだ。それがルールらしい。難しいだろうよ、それは。手を振ったりテーブルにしがみついたりと、忙しげだった。  けれど、どんな意味があるのだろう。お遊びだろうか。幻想的ではあったけど。  ああ、だめだ。今夜もまた、寝る!
/23ページ

最初のコメントを投稿しよう!