十二月二十九日  (晴れ)

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十二月二十九日  (晴れ)

 ビックリした、まったく。半日で片づいた大掃除の後、先輩と世間話をしていたところへ、けたたましく鳴り響いた電話のベル。事務所はもう閉じていたから、現場の電話に回ってきたようだ。 「仕事納めしました。誰もおりませんので、年が明けてからお掛け直しください」  一気にまくしたてて、電話を切ろうとしたんだ。ところが、『待って!』の声。チコ? と思ったけれど、まさかだよ。今日は、東北地方に行ってる筈だから。だけど、チコだった。長距離電話をわざわざかけてくれた。何度も何度も、僕の名前を繰り返して確認してた。 「そうだよっ」て、答えたけれど、小さい声だったし、多分上ずった声だったんだろうな、ぼくの声が。だからわからなかったんだろう。それとも、ぼくの名前を何度も呼びたかったのかな?   突然の予定変更で、今すぐ来るって。到着が夜の十時頃になるから、駅まで迎えに来てほしいって。短い会話だったけれど、いつものチコらしからぬ悲しそうな声だった。  今、九時十分過ぎだ、そろそろ出かけなくっちゃ。
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