序章

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 裏道から引返してラストスパークを賭けて二次会終わりの客を狙って四条大宮から祇園に向かって再度車を走らせた。  四条西洞院の交差点にそれらしいグループがたむろしていた。ラッキー、チャンス到来。あとは乗ってくれと念じながら速度を落として交差点に差し掛かった。歩道に居たグループから一人の男性が手を上げた。  やったーとニンマリした。がここから木屋町ならワンメーターかとさっきまではたとえ直近でも乗ってくれと云う気持ちはもう吹っ飛んでいた。人は喉元過ぎれば何とかで実に気ままナもんだった。しかしワンメーターでも四人乗り小型だから五六人は居そうだ。全員は無理だとふとバックミラーを見たが後続に空車の車はなかった。  横断歩道を避けて車を止めて自動ドアを開けて振り向いて客を待った。男性陣の人混みから押し出させる様に一人の若い女性がみんなに送られドアまで誘導されて来た。此の時間で彼女一人ならメーターは上がると勝手に解釈した。だが彼女は立ち止まって乗るのを躊躇い男性陣の方へ振り返った。 「あたしも連れってってよ」   とドア付近で彼女は乗らない素振りを見せた。どうやら男性陣はお荷物の彼女を帰してこれからまた飲みに行くらしい雰囲気だった。  周りの男性陣は今日はもう遅い。女の子は早う帰った方が良いとなだめられた。  彼女は散々周りの男達とごねていたがとうとう送り出されてしまった。  運転手さん待たしてすいませんね阪急の桂まで行って下さいと彼女を後部座席迄エスコートした男が言った。  行き先を聞いてこれなら少ない水揚げを挽回出来るかとひと息付くと愛想笑いを浮かべてドライバーは車を発進させた。
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