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次の新町通りを下がり直ぐに右折して西洞院に戻り、あとは七条通りで右折して真っ直ぐ走れば桂に最短で着く。乗客からの指定が無ければ瞬時にこのコースで走ると山路は決めた。
「驚いたでもあたし酔ってませんよ。それより運転手さんさっきドアまで送ってくれた人どう思います」
「すいませんしっかり観ていませんでしたから何とも言えません」
道順の指定で無い以外は耳は都合に良いように塞がっている。眼は交通標識と歩道に、その合間にはサイドミラーとバックミラーで狭い道ではバイクに、広い道では他車との車間距離を見定めていた。
「でも観た事は観たでしょう、その印象でいいのよ、何を言われてもあたし文句いいませんから」
少し呑んではいるがまともそうだと直感した山路はトラブルを極力避けるように話を合わすことにした。
「困っちゃったなあそれほど気になる方なんですかさっきの人は」
ウフフっと彼女は意味ありげに笑った。それにつられて山路も笑った。
「嫌だー、何か今勘違いしたでしょうそんな人じゃありませんよ内の会社の先輩ですよ」
「中々しっかりした人ですね」
そう云う事かととりあえず当たり障りのない文句を並べた。
「でしょうあたしもそう思うの」
とりあえず彼は話を取り繕った。
「あっそうそう行き先は桂でいいんですね阪急の桂駅ですか」
山路は本来の業務に戻った。
「そうですけど葛野大路を下がって欲しいの」
車はまだ西洞院を下がっていた。
「判りました。じゃあ五条から葛野大路でいいですね」
山路は七条から五条にインプットし直した。
今日は新年会ですか。と先ほどの取り巻く男性社員の一団を見て不意に言葉が出た。彼女は素直に返事した。あそこで彼女は紅一点だった。
「女性社員は少ないんですか」
「社内ではほぼ絶滅危惧種なのよ」
「じゃあ大事にされてるんですね」
「そうでもないわよ何かのお飾りもの見たいに幕の内が過ぎれば取り替えられる結婚までの居候扱いなの」
言われて見ればさっきの取り巻き連中はそんな感じにも受け取れた。中でも社内を覗き込むようにして彼女の行き先を言った男はその代表格だろう。そして彼女も山路に印象を求めていた。だがアッサリと引っ込めたからそれ以上でもないしそれ以下でも無いかと納得した。
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