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第七章
昼過ぎに車は敦賀の街に入り、待ち合わせのホテルの駐車場に車を駐めた。
ホテルのロビーでくつろぐ二人に出合った。水島さんから金子船長が紹介されると間を空けず本郷は自ら名乗り、加藤を助けたお礼とともに両手を前で合わせて深々とお辞儀をした。実に手際の良い絶妙のタイミングに山路はあっけに取られた。水島さんからお聞きの山路ですと直ぐに気を取り直して船長に名乗り上げた。
越前大野で水島さんから聞かされた救出劇と金子船長の印象は掛け離れていた。浮流物からすかさず減速して漂流者を発見するや救助のヘリコプターを要請せず直ぐに船内に収容した。
低体温症の遭難者は震災で混乱する沿岸の病院をたらい回しにされた挙げ句手遅れになるかも知れなかった。臨機応変な対応で彼は救われた。
目の前の金子船長はその一切の救出劇を指揮した人とは思えないほど一見穏やかな好々爺に見えた。
「こう見えても一旦ブリッジに立つと此の人は一変しますよ」
山路の印象を否定するように水島はすかさず補足した。見抜かれた山路は苦笑した。しかしながら山路もあっけに取られた慇懃な挨拶をした本郷には船長の瞳の奥に有る何かを見抜いて居たのかも知れなかった。それを裏付けるように二人の本郷を見る目は一目置いていた。
それぞれ立場に於ける一連の印象は一瞬の出来事だった。水島はすでにみんなを奥のホテルのティーラウンジへ案内していた。
案内されたホテルのティーラウンジでは娘の未奈子さんが待機していた。四人はソファーに囲まれた低いテーブル席に着いた。そこで水島が娘の未奈子を紹介した。
なんせ女性は本郷さん一人だそうですから殺風景ではいかんと思って来てもらったそうだ。さっそく飲み物を聴く傍らでここのコーヒーはマスターのブレンドが絶妙ですからと未奈子は勧めた。更にお話をしながらでも召し上がれるとクッキーとビザ、アップルパイと未奈子はここのお奨め品を注文した。
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