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いつ、俺の居場所が割れるのか…
恐怖が胸の底からこみ上げる。
大胆不敵に偽の人物として活動を進めておけば当面の事は気付かれないだろう。
こうして、道場で真沙美の相手をしているのは別人の認識を深めさせる為だ。
逃げるうちに本心で偽りの身分に徹していれば発覚は難しくなる。
この事は、刑務所から脱獄して逃げる犯罪者と同じである。
逃げ続けるのは恥であるなんてほざく輩も少なくはないだろう。
だが、事実として生き延びること、復讐の計画を練り進めていけるのは良作だ。
正面突破などと真っ直ぐな手を使っても勝ち目はない。
隠れつつも策を練りつつ復讐の時を待つことが最善の手である。
心の支えであった親父を殺され影響で視界が狭まった状態で行動を続けているという自覚がある。
分かっていても心をは付いてこない。
だが、周りを見渡すとしっかりと周囲の目を欺き通せている。
戦う事や戦い方を授ける事には恐怖は抱かない。
むしろその方が自分の印象を「強いだけの高校生」と固定化させれるからだ。
そんな事を思いながら九重 隆志としての自分を沈め、大文字の仮面を纏い真沙美に目をやった。
拍子抜けしていた表情が引き締まったのが分かった。
「大文字君。お父上が顔を合わせたいと」
ワザとらしく真沙美が腰を曲げた。
小悪魔の様な性格だな……
隆志は屋敷の中に招かれるまま踏み入ったのだった。
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