編入生

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巌のような人だ。 真沙美の父、西田 克人(かつと)を前に隆志は感じ取った。 魔法剣戦闘術、通称魔剣術を僅か50年で大成させた名家の頭領だ。 隙が少なく、纏っているオーラが隆志の臣下の中臣に及ぶ程だ。 屈強な体格を誇り見かけならまだ30代といっても差し支えないだろう。 実年齢は40代後半だったはずだ。 「君が大文字君か。先ほどの戦い振りはなかなかだった。歓迎する」 重低音の声色が部屋に響いた。 偽りの名だと疑っている様子は見られない。 それだけ、魔剣学院への信頼を持っているのだろうか。 西田家は日本の魔法界で大きく影響力を持つ八氏族に所属する。 八氏族とは、魔法協会に指定された安定した魔法師を輩出する血筋だ。 役割としては全国を地方ごとに分割し、その地ごとの守護を任せられる。 師補五十家として魔法協会に指定された家柄で特に優秀、そして実力を持つ家が任命される。 八氏族の中には、親父のとなっていた一族もいた。 ただ、俺の直属の配下でなかった為組織崩壊後は連絡を一切取り合っていない。 他にも多くの地下犯罪組織を配下に置いていたが、これもまた連絡が取れていない。 ここで、閑話休題としよう。 咳払いをして隆志は克人の目を鋭く睨みつけた。 歓迎などはいらない。 隆志の目的は西田一門を配下にする事だ。 そもそも、克人の視線は歓迎の色を持っていない。 歓迎どころか今にも獲物に襲い掛かりそうな肉食獣の気配を持ち合わせている。 「よろしければ貴方とも手合わせをしてみたいものです」 丁寧な物腰を表面上取り作り隆志は毒餌を撒いた。 隆志の挑発に克人は犬歯をあらわに見せた。 八氏族の家長たるもの、娘が負けた相手を制する事が家の名を守る上では隆志の挑発に乗るしかないのだろう。 隆志の思い通りだった。
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