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隆志は道場の中心に立った。
西条家の当主を倒すのだ。
相手にも面子が存在するのだからそれを保ってやらねば、利用価値が下がってしまう。
隆志が待ち構えていたところに、抜き身の日本刀、否、日本刀型MASを携えて、克人が現れた。
日本刀型MASとは武器とMASを一体化させた魔法剣術特有の武装一体化デバイスだ。
それを携えたうえで魔法によって姿を消していたのだ。
ひやりとした汗が流れた。
全く持って気配を感じられなかった事に驚きを超して恐怖を感じそれを自覚しているという事は隆志にとって久々の様に感じられた。
「克人さん。抜き身の刀と一体化させたMASは流石にやり過ぎじゃないでしょうか?」
隆志は苦笑いした。
八氏族の当主が、どこの馬の骨かも知らぬ若者を叩き潰すために現代の国の最新技術のMASが内蔵された得物を準備しているのだ。
見くびってはならない。
隆志の直感が騒いでいた。
「君が実力者だということは分かっている。それなのに手加減を考えられるほど私は君を甘く見ていない」
克人が犬歯を露わにした。
同時に気配が重く、存在感を倍にした。
その姿に隆志は気を引き締め直し、周囲に殺気を放った。
克人の隙のなさは流石は八氏族の当主と評価出来る。
(だが、それでは足りない!)
両者の沈黙を打ち破ったのは隆志だ。
硬直状態のまま睨み合うのでは負ける。
全力で間合いを詰める。
《身体強化》を展開し人知を超えた速度で拳を放つ。
隆志に克人の剣撃が振り落とされた。
《ベクトル反射》を腕に纏わせる。
克人の斬撃を腕でガードし、同時に剣を破壊する。
MASを内蔵させたことによる刀本体としての質の悪化した日本刀は、いくら魔法による側面からの対衝撃能力を向上させたとしても日本刀の構造上、側面からの衝撃に耐えられる力に限度がある。
つまり平の分に強い衝撃を受けると簡単に折ることができる。
日本刀型MASが壊された事に、克人は顔色ひとつ変えなかた。
驚きを露わにしたのは隆志の方だった。
折れたはずの日本刀型MASが再び連結したのだ。
壊しても再び元の姿に戻る武装一体化デバイスなど隆志は聞いたことがなかった。
克人に派手な上段回し蹴りを見舞った。
《超加速》と《鉄壁》を発動させ限界までスピードを高め、体重を乗せた。
克人はその回し蹴りに反応し、日本刀型MASを振りおろした。
咄嗟の判断だったのだろう。
魔法による付加的な能力が全く含まれていなかった。
隆志の回し蹴りは日本刀型MASを5分裂させたのち隆志の頭を捉えた。
しかし克人は膝を折らなかった。
ボクシングで言うオーソドックスのフォームをとった。
拳と拳の熾烈な攻防が繰り広げられた。
3分程の時が経過した。
隆志によって当主である西条 克人が完膚なきまでに敗北を期した。
道場内に一種の衝撃をもたらせたのである。
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