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編入生
後ろ盾は完全に失っている俺だが、腹心と呼べる部下は数名いた。
魔剣学院の学院長もその一人であった。
これまで俺が俺が生活してきたのは、ごく普通の公立高校だった。
これから先の人生を歩むう中で高卒認定は絶対と言っていいほど必要だ。
大学という進路は幼い時から諦めているが、就職するにしても中卒というままでは限られた職場しか就職出来ない。
「我が主、九重 隆志様。我が学院への編入生として貴方様を迎えます。低俗の襲撃者らをなんとしても潰してやりましょう。」
魔剣学院学院長の中臣雅樹は俺の説明を聞くや否、すぐに援助をくれた。
頼りに出来る腹心を持っていた事が役立った場面と言える。
ただ、魔剣学院学院長の立場は、社会的にあまり強くはない。
中臣雅樹は秘密裏に魔法結社の幹部として採用されている。
さらに日本魔法協会の重役の座に降臨している。
中臣雅樹は日本魔法協会での地位を築き上げる上で俺の前面的なバックアップを受けていた経験がある。
つまり、見せかけの権力だけは十分にあるがその権力はあくまでも偽物に近い。
だが、俺一人を編入生として魔剣学院に入れる事は造作もない事だろう。
「中臣雅樹よ。協力感謝する。学生寮などの全ての手続きの方もお前に任せる。資金面は俺が銀行から出す」
恭しく、一礼をした中臣はすぐに行動を開始した。
手続きが終わるまでは中臣の部屋で過ごす。
口座帳は全て身につけていた為、引き落としが出来る。
このご時世においては、キャッシュレスが進んでいるが、その反面、俺の口座が凍結させられてしまう危険もある。
そうなれば、手元にある金しか使えない。
狙撃される危険は少なくない。
《纏の仮面》を行使して、別人に化けると、俺は銀行裏に《転移》した。
逃走時に、転移を使わなかったのは屋敷に対して暗殺集団が突入してきて屋敷の者が内戦を起こさないようにする為だった。
俺が逃げ出したのが見えているなら、ほぼ間違いなく俺を追うと考えていたからだ。
そして、銀行から金を全額引き落とし、俺はまた中臣の屋敷に戻った。
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