編入生

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崩れ落ちた西田を見た俺は溜息をつきたい気持ちで一杯だった。 標準的な基準で考えたら西田は大きく凌駕していただろう。 配下として利用するにはちょうど良いぐらいだ。 俺に追いつく力を付けたいなら俺の元で修行するしかない。 西田に俺が言い放った言葉の裏は俺の元で修行しろという意味だ。 もし彼女が気付いた時、本当に強さに執着しているなら俺の元に着くだろう。 我ながら手駒を増やすのに最も効率が良い作戦を思い付いたな… 崩れ落ちたままの西田に手を差し伸ばす。 「落ち込む気持ちは理解するが、君が強くなれば良い話だ。いつまでも膝を地面につけているんだ?俺に勝ちたくないのか?」 俺は好戦的な目を西田に向ける。 その視線を西田は真っ直ぐと受け止める。 そして埃を落とすようにスカートを払いながら立ち上がる。 「強くなってあんたを倒す。ただ…」 最後に躊躇いを見せた。 言いたくないのだろう。 「俺に勝ちたいなら俺から技を盗んでいくしか無いのは分かっているだろ?」 俺から技を盗むしかないと言っとおけば彼女は必死に俺に食らいつくだろう。 だが、そんなのでは技を盗めるわけがない。 俺が本気を出す事など正直言って今のままでは必要ないからだ。 本気を見せれば、技を盗みきる事が出来るかもしれないが中途半端に盗もうとしても俺が日常的に使っている身元偽造魔法の影響で技の正体を見極める事が困難だ。 見極めるという事は俺に身元偽造魔法も見破るという事だ。 つまり、ほぼ不可能な事だ。 唯一技を盗む方法 それは俺に師事する以外ない。 この事に気付いてくれれば俺の手下に言わば手駒に利用できる。 これからの計画に俺はほくそ笑んだ。 「大文字君。西田家の者として貴方を我が一門の道場に通って頂きたいです」 西田が丁寧に腰を折った。 なるほど 意地でも俺の下にはつきたくないのか。 西田家の政治的な力はそこまでだが、日本魔法協会のなかではかなりの位置にいる。 中臣の比にはならない程の権威を持っているのだ。 利用価値は少なくない。 俺は大文字(だいもんじ) 剛毅(ごうき)として九重 隆とは別人として西田家の下につく。 そうすれば、大文字の方でも少しの力を持つ事が出来る。 「それで良い」 俺は軽く頷いた。 俺の快諾に西田は嬉しそうに笑った。 「大文字君は門下生…」 「間違えるな。貴様らの道場の門下生になるという意味では無い。お前だけを徹底的に鍛えるだけだ」 いきなり西田の言葉遮った俺は苦言を述べる。 目をパチクリさせながら西田は俺の顔を見つめた。 その後、俺が西田家の道場で西田、彼女のみ指導するコーチとして雇われる(・・・・)事で話は纏まった。 当初の計画より有利に話を進める事が出来そうになった俺は満足を感じたのだった。
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