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「――僕が、いるよ」
幼さを残した少年の声が、少女の耳へと流れ込んだ。少女の体がびくりと震え、驚きに満ちた顔がイサへと向けられていく。
「僕は、ずっと君の傍にいる。この先何があっても、絶対に君を見捨てたりしない」
イサは優しく微笑みながら、一言一句噛み締めるように語りかけた。微かに震える少女の体を強く抱きしめ、肩から背中にかけてそっと手のひらを滑らせる。
「だって、僕は君なんだもの」
生温い液体が、イサの服を濡らしていく。大きく見開かれた少女の目からは、大粒の雫が滴り落ちていた。
「……イサ」
少女は縋るようにイサの胸を掴んだ。血に汚れるのもお構いなしに、小柄な体をイサの中へと深く深く埋めていく。
「君の、名前……。そうだったんだ……君は、私の……」
消え入りそうなほど弱々しい声で呟きながら、少女は目を閉じて涙を滲ませた。触れただけで壊れてしまいそうな雰囲気とは裏腹に、口元には笑みが浮かんでいる。
少女の艷やかな唇から、微かな吐息と音がこぼれ出る。何と言ったのかイサが尋ねる間もなく、少女はイサから体を離しーー
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