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私の前職はカメラマンでした。
職場は、様々なお祝い事を撮影させて頂く一般向けのスタジオです。一地方に6店舗ほど支店を持つ会社で、私が配属されていた店舗は国道添いにありました。
白を基準とした壁と緑色の三角屋根を被った洋風の建物、壁面にはバランス良く、お宮参りの赤ちゃんや七五三のお嬢さんの可愛らしい写真が大きく飾られて、車内からも目に付くよう、道路側の敷地には季節ごとの行事をお祝いするのぼりが「ぜひ思い出に残る記念撮影を」という言葉と共に、はためいていたのを覚えています。
在職中、私はその店で随分沢山の撮影をさせていただきました。特に十月頃となりますと、七五三シーズンですので、一年で最も忙しい時期となります。
ええ、私も日々忙殺されていました。とはいえ、純粋に仕事として見ればなかなかやり甲斐はありましたね。
最も、職場として見た時は、――まぁ。
私がこれからお話させていただくのは、この職場で使われていました、とあるカメラについてです。正直に申し上げれば、このお話が人様に語って聞かせられるような、『お話』と呼べるほど上等なものであるのか不安があります。
何せこれは、未だ何一つとして答えがわかっておらず、どうにも中途半端が否めないのです。
ですが、できましたらば最後までお付き合いいただきたく。
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