第1章 こうして望んでもない俺の青春が始まった 

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第1章 こうして望んでもない俺の青春が始まった 

 春というのは新しいことが始まる季節であり、多くの人は新たな出会いやコミュニティに愉楽感と緊迫感を感じていることだろう。特に義務教育を終え、高校に入学する人はなおさら心が躍っているに違いない。そのことは、ここ桜山高校でも同じだ。桜山高校は桜山市の中央に位置し、ここら辺ではまずまずの進学校で知られている。桜山市自体そこまで都会というわけではないが、駅前にはショッピングモールが建ち並んでいるなど、小さな都会程度には発展している。まぁ、多くの人が住んでいる住宅街は田舎というしかないほど何もない。だから総合すると生活に困らない程度の町だと思う。  そして、今日は桜山高校の入学式で、俺を含めた新入生は学生服の胸元に桜のブローチをつけ、新たな生活を目の前に心を躍らせている。そのため、入学式中の校長先生の話や来賓の方の話はみんな上の空だったに違いない。 入学式の後はホームルームがあるため、俺たちは自分のクラスに戻った。ちなみにこの学校はA~Fまでの6クラスあり、俺はA組だ。黒板に貼ってある座席表を確認して自分の席に着く。すると隣から聞き覚えのある声がした。  「あれ、湊同じクラスだったんだ~。また同じクラスだね、よろしく~」  「白々しいぞ、悠人。玄関の掲示板に貼られてあったクラス名簿ですでに確認してただろ」  「まぁね。だけど湊、こういった偶然をあえて装うのはなぜだかわかるかい?」  「どうせおまえのことだ。運命を感じたいとかそんなところだろう」  「まぁ、それもあるね。でもそれだけじゃない。湊とは小学校からずっと同じクラスだから新鮮味がないんだ。せっかく高校生活が始まるのに隣の席が見飽きた顔だと味気ないから気分だけでも新鮮味を味わいたいのさ」  「なるほどね」  話しかけてきたのはほかでもない篠原悠人だ。こいつとは小学校からの付き合いで幼馴染みのようなものだ。悠人は学業の成績は高くないが無駄な知識が多い。まさに広く浅くってタイプだ。性格は人当たりも良く悪いやつではない。俺は友達と馴れ合うのはあまり好まないが、こいつとは長く一緒に居たせいかそばに居るのが普通で唯一つるむ友達と言っても過言ではない。
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