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帰還
「裕樹くん……裕樹くんはえらいよ。宇宙は広くて暗いでしょ? ひとりでよくがんばったね……ずっと、がんばってきたんだね……帰ってきたら褒めてあげる。たくさん、たくさん……」
「ありがとう、真希ねえちゃん……」
一ヶ月後。葉桜の季節に裕樹くんは帰ってきた。
その姿は、プロジェクトのために旅立った頃とほとんど変わらなかった。
「ただいま」
「おかえりなさい」
彼を抱き上げようとしたけど、やめた。
彼はもう、子供ではない。
しゃがみ込んで彼の両手を取る。
ああ、懐かしい温もりだ。あの頃と同じだ。けれど、彼は確実に成長している。
静かな光をたたえた彼の瞳を見ればわかる。
彼はもう、子供ではない。
私は彼を抱き寄せて、やさしくキスをした。
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