6人が本棚に入れています
本棚に追加
/4ページ
階下で玄関を開ける音が聞こえたような違うような…
「おばさんこんにちは。」
入ってきた奴が居るみたいだが空耳かもしれない…。
なぜなら今日の俺はオペレーション499の真っ最中なのだ。
真偽を確かめる余剰体力など俺にはない。
とんとんと階段上がって来る音が近付いてくる気がする。
けどその音も誰かわからない話声のような幻聴に紛れて定かではない。
俺はオペレーション499の真っ最中なのだ。
すーっと引き戸が開く気配がしたようなしないような。
「いる?…」
居るのか居ないのか聞きたいのはオペレーション499の最中の俺の方だ、お前は俺の妄想なのか現実なのか?
布団の中の俺は目を閉じたまま無視を決め込んだ。
目を開けているだけで疲れるのだ、妄想に関わるのはよそう。
と、額に何かがふんわりと添えられた。それがほてって熱くなった俺にはひんやりと心地いい。
現実なのか?
俺が目を開けるとあいつがそこにいた。ああ、こいつの手だったのか。
こいつの手はそんなに冷たくないはずだから俺の体温が高いのかな。
鼻での呼吸じゃ間に合わないものだから、間抜けに口を開いてふうふうやっている俺は声を出すのもおっくうだ。
「馬鹿でも風邪ひくんだ。いつもの元気どこに置き忘れたのよ。」
こいつはそんなぶっきらぼうな事を言ったけど、完全に眉の端を下げた顔で言うお前こそどうなんだよ。
俺が答えないでいると添えたままだった手をすっと上にずらした。
おい何をするつもりだ。
抵抗できない俺にこいつは目を閉じて顔を寄せてきた。
やめろばか!
ぴたりとくっつく額。移っちまったらどうすんだよ。
「熱いね、けっこう熱高いんだ。水分とってる?」
飲めねぇんだよ馬鹿。喉がうまく動かなくてむせちまうんだ。
そんなことも知らず、こいつは置いてあった吸い飲みを手に取って俺の口へ持て来た。まるで要介護者だ。そうだけどよ。
俺が顔を横に向けると一度手を止めたが、やんわりと非難する。
「脱水起こしてもっとひどい事になるよ?恥ずかしがってるの?そう言うのやめない?こういうのはね、持ちつ持たれつっていうの。逆の立場だったらあんただってそうするでしょ?」
なんだそれ、そうだけどよ、仮にも、まぁ仮にだけど生物学上は女のお前の寝室に俺が行けるかっての。
最初のコメントを投稿しよう!