招き猫の彼女

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招き猫の彼女

 僕は出会ってしまった。  それは僕の部屋だった。いつも部屋の片隅に飾っている招き猫の置物。それまではなんとも思ってなかった。  だけどなんでだろう。僕はすごく疲れていたのかもしれない。その置物に願った。 「幸せになりたい!」  そしたら招き猫のような彼女に……具体的に言えば招き猫の姿をした巫女の女の子。 「じゃんじゃじゃーん、あなたが選ばれました」  その女の子は言う。 「な、何に」  僕は聞いた。 「願いを叶えます!さぁ、幸せになりましょう!」  彼女は答える。  数時間後  僕――ヒロキは彼女と散歩をしていた。  彼女は、僕の話にうなずいたり、笑ったり……  もう着替えれば普通の女の子だった。女の子と話したのはいつぶりだろう。すごく緊張したけど、不思議と彼女はほわほわしてるというか、さすが、招き猫というか、優しい態度に安心した。  だけど問題が一つ、話し終わったあとに言うのだ。 「それって人間の考えですか?」  人間の考え?  「じゃあ他の考えって何?」  女の子……ねこさんと呼ぶことにした。  ねこさんは考えたあと 「神様や私たちに考えはありません。あるのは、ある、ない、の違いです」 「ある、ない……」 「はい。だからそれ以上もないし、それ以下もありません。つまり、実在する以外の理由がないのです」 「じゃあ、ある以上に何かを決めているのは人間だけで、何かを感じたり、何かを思ったりするのは人間特有ってこと?」 「そうです。私たちはゼロかイチしかありません。そこに悲しみや喜びを抱いたりしません。ヒロキさんがいる。私がいる。それだけです」 「そうか、じゃあ僕が幸せになりたいっていうのも人間の考えで、何かを得たいと思うのが神様的には楽ってこと?」 「そういうことになります。最初に幸せになりたい、とヒロキさんは言いました。どういうことですか?」 「僕は心はウキウキしたり、ほっこりしたりそういうことなんだけど……わかる?」 「わかりません」 「だよね……じゃあ僕は君と一緒にいたいよ」 「私と? なぜですか?」 「だって、僕は君といると、心がウキウキしたり、ほっこりしたりするんだ。だから僕とずっと一緒にいてくれる? それが僕の幸せかもしれない」 「かもしれない? かもしれないに私は決められません」 「じゃあなる! 僕は君といると絶対幸せになる!」 「わかりました。その願い叶えましょう」  そのあと、何年、何十年と僕たちは一緒に暮らした。
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