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弔い
児童養護施設に到着した。施設には叔父も入所の立ち合いに来てくれた。
「俺ができるのはこれくらいだ。すまない」叔父は頭を下げる。
「こうなったのは母親のせいだ。叔父さんが頭を下げることはないよ」少年は叔父を慰める。
叔父が帰った後、まず待っているのは持ち物検査だ。
若い女性職員が鞄の中を開けて中身を検める。白手もつけないなんて常識が無いのかと、少年は苛立ったが顔には出さず表面上は快く応じる。
検査を進めると職員の手が止まる。「このちらしに包まれている物の中身を開けるね」職員は言うとちらしをゆっくり剥がしていく。
「これは誰の物なの」一言いうと職員が少年に視線を向ける。
「父親の位牌ですが」少年はあっさり答える。
「これは叔父さんに渡そうね」悪びれる様子もなく職員は言う。
「自分の親を弔いたいのは子の当然の想いでしょう。どうか手元に置かせて頂きたい」少年は懇願した。
結局、施設の統括職員から「そんな自由は認められない」と鶴の一声で位牌は叔父が預かる事になった。
少年の社会に対する不満が更に強くなったのは言うまでもない。
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