転身用意

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転身用意

野営生活が一週間を経過した。少年は生活が板につき、早期の内から越冬準備について検討していた今日この頃。 早朝いつも通りにシェルターを後にしようとした。だが何か違う。少年は本能的に違和感を感じた。素早く目を細めて橋の下から外を見回す。 背格好まではわからないが男性2名がこちらの様子をうかがっているようだ。 河川敷自体は市井を流れており、バードウォッチングで訪れる物好きはいない。 「まさか警察かあるいは・・・」 少年は生唾を飲むと最低限の物だけを鞄に入れ、男性達がいる反対側から這い出ると小走りで橋の下を後にする。 少年は友人と合流し朝昼兼用の食事を摂りながら友人に早朝の出来事を共有した。 「河川敷を不法占拠しているから通報されたのかもしれないな。」 友人は神妙な面持ちで卵焼きをぱくつく。 「そうだとしたら即職質をかけてくるから不自然な箇所が多いんだ。」 少年はお茶をすすりながら応える。 「なんにせよ今日は夜更けまで戻らないほうがいいな。人目についた以上、今のシェルターは放棄して新天地を探そう。」 「そうだな、今晩シェルターの出発準備をして深夜のうちに発つよ。」 少年と友人は顔を見合わせ頷き合う。 友人は部活へと出発した。 少年は図書館での知識収集を中止し、新しい野営地を探した。 某有名お笑い芸人のように公園で野営する事も考えたが人の目につきすぎる。少年は街を歩きながら最適な場所はないかと思考を巡らせる。 「あっあそこなら」 少年は閃く。目的地へ向け歩を進める。20分程すると到着した。 周囲には空き地が広がっており、ポツンと解体途中で放棄された工場がある。どういった経緯で放棄されたかは不明だ。だが少年が幼い頃からずっとそのままだ。 少年が小学生の頃から廃工場に入らないようにと指導されているので、近隣の小学生は誰も寄ってはこない。 「ここならいけるかもしれない。」 少年は笑みを浮かべる。
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