次の委託先

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次の委託先

個別指導解除後の少年を待っていたのは、お決まりの集団生活だった。 最初に入所していた際の面々は、既に退所しており一人もいなかった。 真面目な入所態度で少年は生活を送った。 なぜなら、職員から一保出戻り組はあまり良い目では見られないからだ。 模範的な生活を続けていると職員から感じる、監視の目が緩くなる事に少年は気が付いた。 その気付きは少しだが、少年の心に余裕を与えた。 そんな保護生活を半月程送っていたある日、少年は児相職員に呼ばれ打合室に通された。 どうやら次の委託先が決まったらしい。 少年は不安と希望が入り混じった感情に駆られた。 「次の候補は里親さんだ。」 職員はそう言うと少年に目を向ける。 「ようやく希望が叶うのか。ありがとう。」 少年は笑顔で応える。 「だが一つ言わなくてはならない事がある。」 職員は目を落としながら言った。 「もしそこで決まれば今までと違う土地に行くことになる。次の候補先は宗教家の夫妻で神職をしている。住む場所は教団本部がある市町村だ。」 少年の笑顔が瞬時に固まる。なぜならその宗教の本拠地があるのは、隣県になるからだ。 「それは県を跨げという事か?」 「そうだ。最大限、要望は考慮したがこれで限界なんだ。」 これ以上求める事は、無い袖を振る事と同義だと瞬時に思い、職員を追及しなかった。 その後は顔合わせの日取りを伝えられた。 どうやら児相で顔合わせをした後に、相性が合えば1日体験宿泊を里親宅でするらしい。 その結果を基に双方の合意を得れば、正式に里親委託になるという仕組みだ。 少年はまるでお見合いのような仕組みだと感じた。 それならば児相職員はさしずめ仲人といった所だろうか。
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