忘れた人

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忘れた人

「あっ、キミ!」 「はい?」  人が行き交う、渋谷のスクランブル交差点。  すれ違い様に声をかけられた私は、ふと後ろを振り返る。  スラッと背の高い、ラフな格好の男性。歳は20代後半くらいだろうか? 「こんな所で会うなんて……。久しぶりだね。元気だった?」  その人は、少し興奮気味にそう言ったが、私には見に覚えのない人だった。 「あの、どちら様ですか?」  私がそう言うと、男性は「えっ?」と驚いた顔をした。 「覚えてないの? 一月前──いや、二月前かな? 俺達、付き合ってたんだけど……」 「えっ?」  今度は、私が驚く番だった。
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