「姉の告白」

1/2
5人が本棚に入れています
本棚に追加
/6ページ

「姉の告白」

私が帰ると  必ず鍵を開けてくれる。 「お姉ちゃんおかえり!」 満面の笑みで飛びついてくる。 毎度白シャツにシワを作る。 アイロンは手間がかかるけど その屈託ない笑顔を見れば なぜかいつでも許してしまう。 「あのね あのね!今日ね、花ちゃんとね、かくれんぼしてね!」 その弾ける声を聴いて 安心する。 安心しながら  不安になる。 「レモンパイ出たんだけどね!お口 ひりひりしなかったよ!」 その情報を聴いて 安心する。 安心しながら  異常を感じる。 鼓動が  速くなる。 「駅前でハロウィンフェアやってたよ。これお土産。」 「わぁー!!ありがとう!」 かぼちゃ型の棒付きキャンディーを 手本のように口に含んで ニコニコしている顔を見ると 安心する。 安心しながら  後ろめたくなる。 「はい、リップクリーム塗るよ。」 「これヤダー!変な匂いするのー。」 「我慢して。しもやけ防ぐやつだから。」 「うーーー(´;ω;`)」 薬用の匂いに顔をしかめながら 膝枕で耐える  愛らしい顔 今日も何もなかった。 安心する。 安心しながら 恐れる。
/6ページ

最初のコメントを投稿しよう!