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雨
もう大好きなファンの前に出る元気もない。
結婚まで考えた「運命の恋」だったはずだったのに…
自分たちは距離に負けたのか…
弱い絆だったなと苦笑する。
「終わったんだよね」
もう今のケニーには、アンディのいるアメリカに繋がる
空に問いかけることしかできない。
日に日に体力が落ち、ファンからも心配され続けた。
そしてついに、歌手の命である声があまり出なくなった。
専門医によると精神的なものによる所らしい。
大いに心あたりがあり過ぎる。
この声では歌うどころか、話すこともままならない。
ケニーは芸能界を引退した。事務所からは、
休止にすればともいわれたが、ケニーにはこの状況が
耐えられなかった。
療養と称し、ヴァカンスに来ていた町を
ケニーは、歩いていた。
今は何も考えたくはない…。
スコールが降ってくる。
もう喉のことも気にしなくてもいいから、思う存分濡れても
構わない。
以前なら撮影以外ではこんなことはしなかった。
でも…今は、どうでもいい。
目の前を猫が横切った。
遠目に車が来るのが、見えた。
アンディの好きな猫。もう関係ないのに…
「危ない!」と思うのと同時に、体が勝手に動いてた。
車の急ブレーキの音はどこかで聞こえてたけど、
ケニーにはそれだけだった。
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