病室

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ドクターは持っていたタブレットを操作しだした。 「CTで異常は見られませんから、一時的な記憶喪失  かもしれません」 「頭を打ったのかしら?」 その女性は首をひねっている。 「O.K」 その女性は、微笑んだ。 「自己紹介、まだだったよね?私、アンナ。一応デザイナー  してるの。よろしくね」 手を差し出してきた。 咄嗟に握手してしまった。 「仕方ない。私が記憶が戻るまで、面倒をみるわ」 後ろで突っ立っている秘書は、しかめっ面だ。 アンナは振り返り、低い声で秘書を脅す。 「別に恋人にしようってんじゃないから、いいでしょ?  ほっとけないし…、それに彼、悲しそうだし」 秘書は天井を仰ぎ見た。 それを確認したアンナは、前に向き直った。 「それでいいかしら?」 「でも…」 「じゃーどんすんの?」 こうなれば仕方あるまい。自分は名前すら、分からない のだから。 「よろしくお願いします」 「こちらこそよろしく」 アンナは嬉しそうに笑った。
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