僕のきもち。

1/2
前へ
/13ページ
次へ

僕のきもち。

僕は、いえ私は産まれた時から貴族だった。 礼儀作法は物心つく前から厳しく教えられ、人付き合いも、行く場所も、全てにおいて貴族だということを忘れるなと、お前は公爵家の一人息子だ、家の名に泥を塗るな。そう言われて育った。 「恋ってなんだろう。」 昔隠れて読んだ庶民の恋物語は、恋やら愛やら書かれていた。恋をすると楽しくて幸せで、でも時に切なく、苦しいと書かれていた。 私にはそのどれもが分からないものだった。 私は今年18になり、今年で学院も卒業する。勿論首席だ。それ以外は許されなかった。 そして、卒業と同時に婚約者である、一つ下の王女殿下と結婚する。王女殿下、ミラ様は可愛らしいと思う。婚約が結ばれて6年程経ち、最初は愛らしかった少女が、最近は色気がついて、綺麗になったと言われている。 好きか嫌いかでいえば、好きだ。でもこれはきっと恋ではない。親愛に近いものだ。 貴族が政略結婚するのは当たり前だ。それは小さい頃から散々言われてきた。勿論両親も政略結婚だ。 厳しい両親だが、ふとした時二人だけが分かりあってる空気になる時がある。言葉に出来ないが、言葉にはしないが雰囲気から、信頼のようなものを感じられた。 私は多分ミラ様とこうなるのかと漠然と思った。本で見た燃え上がるようなものは無いが、信頼し合い、分かり合う、そんな夫婦になって、公爵家をついで、領地を治めるんだと。
/13ページ

最初のコメントを投稿しよう!

11人が本棚に入れています
本棚に追加