僕と門番。

1/1
前へ
/13ページ
次へ

僕と門番。

国を追い出され、1ヶ月。馬車を何度も乗り換え、最後は船を使いようやく着いた島国「ウェラ」。 国の入口の検問所まで着いたら、付き添いの兵士が公爵様からと言って大量の金をもらった。 手切れ金か。思ったのはそれだけだった。 金を渡した兵士達は船へ乗り、国へ帰って行った。 「ようこそ、ウェラへ。入国証はお持ちですかい?」 検問所には二人の男性が立っていた。1人は50代位の恰幅のいいおじさんと、30代位のひょろっとした男性だった。今の時間帯が少ないのか、元々ウェラへ来る人が少ないのか、今は私しか居なかった。 「すみません。入国証は持ち合わせておらず・・・やはり入国出来ないですかね?」 困ったように言えば、いや、実際困った。そこまで用意しろよ、とは思ったが、急な事だったし仕方ないか。 「いや、無くても入れるが、いくつか質問と入国料として、銀貨3枚を納めて貰うことになる。」 そう答えたのは、若い方だった。 銀貨3枚か。安いほうか?一応もらった金を覗いたら金貨が大量に入っていた。銀貨100枚で金貨1枚と考えると安く感じるが、あまり無駄遣いは出来ないな。 「構いません。」 「それではいくつか質問させて貰う。」 聞かれたのは名前と年齢、入国目的だった。 「セナ・オグレ・・・いや、セナと言います。訳あって家を追い出されたので家名はありません。歳は18です。入国目的、は移住になるのでしょうか?」 おじさん二人は目を合わせ、何やら話し合っていた。 「すまんな。まあ無いケースでは無いが、珍しいもので。坊主これからどうするかは決めてるか?」 恰幅のいいおじさんは、人懐っこい笑みを浮かべ、私の頭をガシガシと撫でた。 「ディジさん、坊主が困ってますよ。」 若い方のおじさんが助けてくれて助かった。髪がボサボサになったので手ぐしで直した。 「すみません。頭を触られるの初めてだったもので、反応に困ってしまいました。不愉快にさせてしまったら申し訳ない。」 頭を撫でられたことはない。甘やかしては為にならんと、そう父が言っていたから。抱きしめられたこともない。褒められたこともない。 よく考えたら、私はあまり出来ていなかったのかも知れない。勘当されて当然だったのかも。勉強だけじゃなく、乗馬や狩りも人並み以上には出来るがそれだけだ。貴族として当然。それが全てだった。 「そうだったか、すまねえな坊主。初めては綺麗な姉ちゃんのが良かっただろ。」 ディジさんと呼ばれてたおじさんはガハハと笑うが、どことなく気遣われたのだと思った。 「ところで坊主。その様子じゃすることも決まってないんだろ?俺達も殆ど来ない客人を待ってるだけで困ってるんだ。よかったら、俺達がこの国について教えるぞ?」 確かに。何も知らないというのは怖いことだ。情報は命。今の俺は裸で敵地に立っているようなものだ。折角の機会だお言葉に甘えよう。 「御手数ですがお願いします。」 入国料と授業料なものとして銀貨5枚を渡した。最初は要らないと言われたが、流石にそれでは申し訳ないと言えば、渋々受け取って貰えた。
/13ページ

最初のコメントを投稿しよう!

11人が本棚に入れています
本棚に追加