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「ハァッ、ハァッ、……ふっ、ハァッ」
セントラルの制御棟。イーストとほとんど同じような作りをした制御室の中で、ハヤテは肩で息をしながら座り込んでいた。その右腕に巻かれた布には血が滲む。
地面には、横たわる燈の姿と、心配そうに身体を舐めて回るジェイクだけがオレンジに浮かび上がる。
外では無数のドローンの警報音が鳴りっぱなしになっているが、ハヤテにはどうしようも無かった。
ただただ、酸素の足りない頭で、この数分で起こった出来事を振り返ることしか出来なかった。
******************
二人が異変に気付いたのは、イースト地区の制御室で、監視カメラに人影が写ったのを見た時だった。
「おい燈、誰か来たぞ。」
「誰か、って?」
「俺が知るかよ。でも……やべえかもしれない。……テロリストかも。」
「えっ恐いこと言わないでよ。」
ハヤテは外の電気が付いた時点で奪還が終わったと思っていたが、燈はまだパソコンをイジっていた。
「1人……2人だな。身のこなしが素人じゃねえ。」
監視カメラの映像を映すディスプレイに、ハヤテがかじりついている。
「なぁ燈、もう終わらねぇか?早くセントラルに移ろうぜ。」
「あともう少し……!外部とのネットワークさえ確立出来れば、セキュリティはリモートでも強化出来る。」
「いや、ヤバい。………退避だ!!燈、中断しろ!!!」
「何で!?」
ハヤテは転がっていた荷物を集め始めた。
「あいつら、武器担いでる。見た目からして軍用の銃……機関銃だったらかなりヤバい。俺ら殺されるぞ!?」
「そんな!?」
「このペースと位置からしたら……あと5分かからずにここにたどり着くかもしれない。」
「でも、でも……」
燈はもうすっかりシステムの核心まで入り込んでしまっていた。キーボードに手が吸い付いたようになって取れない。
「ああ、もうっ!もしお前が最後までやりたいっていうなら、せめてこちらにも武器を用意しろ。ドローン1台くらい、こっちの自由に出来ねぇか?ここは階段のある出入り口は、一つしか無ぇ!!!」
「あれ、てか警備用武装ドローンなんだから、それオンすればそもそもここに来る前にドローンが止めてくれるんじゃない?そのためのドローンなんだし。」
「……それやってくれ!!」
燈はいくつかのコマンドを打ち、先程自分たちのために無効にしたドローンの警備を再度復活させた。
すると、案の定、すぐに複数のドローンが侵入者を検知し、見る間に赤いランプと警報があたりを満たす。
「よっしゃ!余裕かよ!」
「あれ、でも………」
「なんだよ」
ハヤテを振り向いた燈の顔は、泣きそうな顔をしていた。
「ハヤテ。この子たち、未成年だよ。俺達と同じ、武器使用不可だ。」
「なっっ」
二人はそのことについて、頭を整理するのに時間がかかった。
迫りくるテロリストへの恐怖
警備用ドローンが役に立たないという焦り
相手が同じ子供なら、自分たちを撃たないのではないかという期待
しかし、それでも撃ってきたら?……自分たちもその子たちを撃たねばならない……?自衛のために。
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