イースト【奪還】

8/18
47人が本棚に入れています
本棚に追加
/55ページ
「今回、あなた達二人に依頼するミッションは、『サワン港湾のターミナルオペレーションシステム(TOS)の奪還』です。私は内閣官房において、このミッションであなた達に対面する全権を任された者です。この船には私とあなた達二人しかいません。」 「それは、あんたが手術したってことか?船の運転も?」  ハヤテがいきなり口を挟んだ。鷹揚な話し方だが、生意気さは燈も人のことを言えたものではない。  白糸はふん、と鼻を鳴らす。 「そんなこと出来るわけない。遠隔手術に決まってるでしょう。船も自動操舵だ。」  ちっ、と舌打ちをしたハヤテの首の後ろを盗み見る。うっすらとグレーの凸部があるのがわかった。大きさは先程の手触りと一致する。はぁ、僕の後ろもあんな風になっているのだな、と燈は思った。  白糸の首にかかっている3つのメモリ。燈と、ハヤテ。あとひとつはひょっとしたら白糸のものなのかもしれない。この船にいる3人は一蓮托生ということだ。これまでに感じていた違和感、立場の割に余裕の無い白糸の様子が、少しだけ納得出来た。 「サワン港湾は、アジア最大級のハブ港湾です。1日平均5万個のコンテナを取り扱い、平均80隻の大型船が停泊する。しかもその全てが無人で行われている最新鋭の埠頭。それを簡単に1km四方ずつ3つに区切ったのが、イースト地区、セントラル地区、ウエスト地区です。その全てのエリアの制御システムを、奪還する。」 「奪還、とことは誰かに奪われたものを、奪い返すの?」 「そうです。何者かにハッキングされたシステムを、再び日本の支配下に置く。」  燈は心がざわめくのを感じた。いつも案件を受注し、課題を聞く時には必ず興奮する。それが難しかったり、スケールが大きいとなおさらだ。そしてそれはリアルでなければならない。ゲーマーとしてeスポーツでも十分な才能を発揮した燈が早々に活動の場をホワイトハッカーに変えたのは、その一点に尽きる。  ね、最高だよジェイク。  そう言おうとして、燈は「あっ」と声を上げた。 「ちょっとごめん、僕の荷物、ある?ジェイクを出してあげなきゃ。」 「ジェイク?ひょっとしてこれですか?」  白糸は、スーツの内ポケットからホロ投影機を取り出した。
/55ページ

最初のコメントを投稿しよう!