友人からの手紙

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11月30日(木) 晴 前日、健康診断で引っ掛かったため病院で検査を受けてきた。どうやら、大腸に腫瘍があり、手術では完全に取り除くことはできないらしい。医者が言うにはもって一ヶ月だろうとさ。頭が真っ白になるというのはこういうことなんだろうなと実感した。  何かしなければならないという焦燥感に駆られ、すぐに思いついたのが日記をつけることだった。誰に見せる予定もないが、書いておくことにしよう。 12月2日(土) 晴  医者に詳しい検査をするから明日も来てくださいと言われて一日経った。死ぬことが確定しているのになぜわざわざ行かなければならないのだろう。  そう思い、勢いのまま体育館に来てしまった。この体育館は、最近できた第一体育館と、古い第二体育館があり、休日のせいか第一体育館は人でごった返していた。  第一体育館の前を通り過ぎ、少し奥にある第二体育館に向かった。そこには二人しかおらず、片方は小学校高学年の男の子、もう片方は体格のいい20代前半の男に見えた。バスケで一対一をしてるようだった。  ここで帰れば良かったものの、頭がどうかしていたらしく、彼らに話しかけてしまった。 「バスケ楽しいですか?」  男の方は若干驚きつつも、笑顔で返した。 「高校までやっていて、名残でやってしまうんですよ。あまり楽しいとは言えないですけど。」  そのまま彼と打ち解けて男の子を忘れてしまうくらい笑ってしまった。こんなに笑うのは保育園の頃だろうか。  色んなことを話した。最近あった面白いことや趣味、先輩の愚痴など。何もかもが面白くて、僕に無いものだと感じた。  僕は一時間くらいで彼と別れた。がんのことについては何一つ話さなかった。このことを話すと多分暗い話になってしまうから。
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