第一口・―最期の晩餐―

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 だから素人なんだが、言ってみればにわかってやつだ。  俺はそういう連中を許せない質でね。  だから、あまりにも酷い時は、捕まえて説教したりな。  歳を取ったらさ。どうにも説教臭くていけないね。だってさ。料理というのはやっぱりさ。食材選びから始まっていると思うんだよね。だとしたらさ、そこをいい加減に扱ってしまっていたら、初動から(つまず)いている事になってだな。そんなん、料理にはおろか、食材に対しても非人道的な、侮辱した行為だとはぉもわなぃか?  え。  何だよ。思わないのかよ。  料理はお母さん任せだって……。  良い歳こいて恥ずかしいやつだな。  「自分は家事を何にもしてません」って意味の事を、誇らしげに報告するなよな。  恥ずかしい。  ……まぁ、良いか。  将来的に困るのはお前であって、俺ではないんだし、この話はこれで置いて。  何だって?  俺からの手料理が美味しかった?  そうだろう。  何たって、他ならぬ俺の手料理だからな。  ほら、遠慮しないでもっと、沢山食べな。  な?  食材ってさ、育った環境や、食材になる瞬間の状態でも、美味しさが決まったりするんだぜ。  だからな。  食べな。  もっと、もっと沢山。  俺が長年研究した。最高峰の食材を使った、最強の組み合わせで調味した、これ以上ない手料理なんだ。  美味いに決まってらぁ。  俺も食べるよ。  今はお前が専念しろ。  ……食べる事に、な。
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