第二口・―駆け引きの食卓―

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 ……もしかして、こっちの企みがバレたかな?  あまりにも空腹が過ぎると、通りすがりの人を適当に頼ってみたけど、引っかかったのが目の前にいるコイツだった。  試しにお金もないと言ってみたら、それなら家に入れてご馳走してやると言われたけど、どうも様子がおかしい。  先刻からにやにやしているし、こっちの食事風景を眺めているだけで、自分は全然何も、口にしようとはしない。  取り敢えず料理をほめて、一緒に食べるようすすめてみたけど、どうも遠回しに断られてしまった。  これは、気付かれてしまったのか、はたまたただお腹が空いていないだけなのか。  どちらかは理解出来ないが、どちらにせよ、こっちの計画を遂行するためには、何か食べてもらわないと非常に困る。  コイツ、後で自分も食べると言ったけど、本当かどうかは非常に怪しい。  何かを企んでいるのか?  話題、何か無難な話題はないかな?  コイツの気を逸らせるような、面白い話題を提供してやれば、形勢は逆転するかも知れない。  とにかく、こっちが主導権を握るためには、先に手を打たない事にはどうにもならない。  何か、良い手はないものか……。  ……。  料理、本当に美味いな。  怪しまれないよう、一応口にしたけど、料理に無味無臭の毒でも仕込まれているんだろうか。  まぁ、こっちには、並大抵の毒に耐性があるから、無駄と言えば無駄なんだけどな。  けど一応、用心はしておいた方が良いのかな。  こっちも油断していたら、コイツに何をされるのかは、不安ではあるからな。  取り敢えず、もう少し様子を見て、抵抗するようなら次の手を考えてみるか。  それとも……。  もう。  いっその事。  ヤルか?  ……。  ああ。  さいごのばんさんな。  何を食べたいかなぁ。  大好きなのは、今更だしなぁ。  滅多に食べられないものは、……あまりないか。  さいごのばんさん……。  なぁ、ナニを、たべたいのかなぁ?
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