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「進路ねぇ…。」
みんなと別れた後、一人でカノンに向かいながら先ほどの会話を思い出していた。
正直私が今の高校を選んだのは、偏差値の高い名門進学校に特待生制度だ。
家族と離れるために、という目的があった。
勿論天音と一緒にいたい。
だけどそれ以外の理由はない。やりたいことも、やるべきことも。
強いて言えば珈琲の勉強がしたいくらいか。でもそれは趣味で……仕事にするには現実味がなさすぎる。
………やはり一流企業を目指すべきか。
そうなると学歴がほしいところ。天音の大学は評判がいいし、偏差値だって悪くない。
でも……少し足りない。
確実に視野を広げるためにも、もっと上を目指すべきかもしれない。
それは……天音と離れなければならないことを意味する。
「分からん…マスターに相談……あれ?」
鍵は開いてるけど、カノンが閉まってる?
あれ、今日は休みじゃないはず。
特に平日休みにすることなんて……それこそお母さんの命日とかでない限りあり得ない。
どういうことだ?
中に人はいるっぽいし。
「マスター。」
ドアを開ければ、やっぱりマスターはいるし、中は営業中と変わらない雰囲気だった。
それに……。
「………あれ?あなた方は……。」
でも店の看板はcloseになってた。
どういうことだ?
「お帰りなさい。その制服、本当に高校生だったのね。」
「そのようだな。全く…君には驚かせられてばかりだ。」
中にいたのは、珈琲に強い拘りを持っている今や常連になりつつある男女の二人組。
女性は霧雨美麗で、男性は彼女の紹介で来るようになった方だった。
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