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ドンドン、ドンドン。
誰かが階段を上ってくる音が聞こえる。力強い感じから察するに弟のようだ。
ドンドン、ドンドン。
んん、もう1人、後から付いて来ているようだ。この足音はお父さんかな。
トントン。トントン。
ノックの音がドアから聞こえる。私は気が削がれて意気消沈した。
「なあに?お父さんまで一緒なの?オセロなんて遣らないって言ってるでしょ」
私はそう言いながらドアを開けた。
「違うんだよ。テレビに、亜美の好きな俳優が出てるぞ」
お父さんがニッコリ笑う。
「う、うん。ありがと、後で見てみる」
「チャンネル教えてやるよ」
お父さんは「6だったかなあ、8だったかなあ。下に行って新聞持ってこようかな」とあやふやだ。
「いい、いい。自分で確かめるから」
私は右手をブンブン振った。
「浩太はなんなの?」
「俺はオセロ」
「それかあ。オセロは明日じゃないとダメ。さっき言ったばかりじゃない」
そう言って無理やりドアを閉めようとした時、弟がふざけて足を出した。木の板に痛そうに挟まれる足を見てアワワとする。それに諦めたと思ったオセロも持って来たようだ。足元に白黒の駒が散乱していた。
「ゴ、ゴメン」
「いてえな。乱暴だなあ。やっぱりオセロが遣りたくてさあ。それにお笑い早く観たいだろう。俺知ってるんだよ。だからチャンネルを教えてあげようと思ったんだ」
「足、見せてよ」
ゴツン、
頭と頭がぶつかる。
「い、痛い」
チカチカと光が飛んだ。私は言葉を続ける。
「まったく気を付けて・・・お父さん見た?どう考えても浩太が悪いよねえ」
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