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課長を特別対策室に招き入れると、課長の長い説教が始まった。
しかし、先輩たちには矛先が向かない。
そんなひいきだ……ずるい。どうして僕だけ注意されるのか。先輩たちだって乗っているじゃないか。
僕はおもわずちょっぴり涙目になった。
「あれは椅子の代わりです」
僕は苦肉の策としてバランスボールを指さす。
課長は、大きなため息をついてエービーコンビと僕を見比べた。
「おまえもとうとうあっち側にいってしまったか」
課長はがっくりと肩を落としてドアを閉めていった。
僕はお説教から突然解放され、ぽかんとした。
エー先輩は「おめでとう。これで君も特別対策班確定だ」 と喜び、ビー先輩は「いい後輩ができた。おお、そうだ、おまえ、名前なんだっけ」と聞いた。
「はい、幕内新之助です」
「かっこいい名前だな」
ビー先輩はほほ笑んだ。初めてビー先輩の悪意のない笑顔を見た気がした。 意外にキュートに笑うじゃないか。
エー先輩は天使のようで人たらしだし、ビー先輩は筋トレばかりと思っていたが……案外いい人だったのかもしれない。
でも僕がそう思ったのは内緒だ。
「じゃ、新ちゃんってことだね」
エー先輩が僕の肩の上に手を置いた。
「ようこそ! 捜査二課特別対策班へ。おめでとう! 配属決定」
エー先輩とビー先輩は「これはプレゼントだ」と言って、ダンボ―ルひと箱を僕にくれた。
僕は思わぬプレゼントで気持ちが高ぶった。
「あ、ありがとうございます!」
僕は喜び勇んで箱を開けた。
中にはロングライフパンがびっしり詰まっていた。
「体調管理も仕事のうち、残業夜食も仕事のうち。毎日事件は起こらない」
「脳トレ、筋トレ仕事だよ、日常にこそ努力が必要」
二人の頼もしい先輩がそっと僕のそばでささやいた。
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