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「将生は……彼は、大丈夫ですか」
ここに同席しないということはもう二度と草太に会いたくないということか。顔も見たくない。言葉も交わしたくない。今度こそ嫌われてしまったのかと思うと胸が痛んだ。
あの動画を見て、彼が今どんな気持ちでいるのか……謝っても許してもらえないことをしてしまった。
社長は困ったように眉を寄せ、言葉を選ぶようにした。
「実は、あいつ家に閉じこもったまま出てこなくなってね。結構ショックだったみたいだ。あいつにとって目の色はかなりのトラウマみたいなんだよね。小さいころからそれで仲間外れやいじめにあったりしてね。気持ち悪がられないように長い前髪で隠してバレないように、ってだいぶ苦心していたようだ……それは林くんもよく知っているよね」
「……はい」
中学時代の将生を思い出す。うつ向いて長い前髪で顔を隠し、目立たないようにいつも教室の隅で黙っていた姿。それが今の将生と重なる。
「申し訳ありませんでした……っ」
震える声でいくら謝っても取り返しがつかない。
自らをバケモノだと自嘲する将生はいまでもトラウマを抱えたまま生きていたのだ。モデルになってたくさんの人に称賛されながらもそれは本来の将生の姿ではない。真っ黒な作り物のレンズ越しに見える偽りの世界は嘘にまみれていただろう。
それでも前に進もうとしていた将生の傷をもう一度えぐった。
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