第一章 出会い

2/3
221人が本棚に入れています
本棚に追加
/39ページ
 と、ドアがノックされると落ち着いた声色で長身の男が2人並んで入ってきた。 「お待たせしました」  ものすごい迫力に息をのんだ。  190センチを超える長身と尋常ではない美貌に草太はゴクリとのどを鳴らした。雑誌やテレビの中でしか存在しないと思われたMASAKIが目の前にいる。 「はじめましてMASAKIです」  清潔なシャツと細身のパンツというシンプルないでたちながら圧倒的なオーラ。黒縁のメガネでラフな雰囲気を漂わせているがにこりと笑みを浮かべる彼はイメージそのままでカッコイイ。    呆気にとられたように固まった草太の腕を猪尾がチョイチョイと肘で突っついた。ハッと我に返って急いで名刺を差し出した。緊張で手が震えてしまう。 「初めまして、林と申します」  だがそれを丁寧に受け取ったMASAKIは草太に向かい合い、柔らかく微笑んだ。 「MASAKIです。よろしくお願いします」  モデルとか芸能人ってもっと傲慢なのかと思っていたけれど全然違った。柔らかな物腰と優しい笑みに安心して草太も微笑み返す。  これから一緒に仕事をしたい相手が嫌な相手じゃなくてよかった。 「先輩お久しぶりです」 「うん、元気だった?」 「はい、猪尾先輩に声をかけてもらえて嬉しかったですよ」  猪尾も社長であるもう一人の美形に物怖じすることなく和やかに挨拶を交わしている。社長自身もバリバリ現役のプロモデルで海外のショーをメインに活躍しているそうだ。  というか、今先輩って呼ばれていたか? 後からどういう関係なのかもう一度聞こうと密かに思う。  一通り挨拶を済ませるとコーヒーが運ばれてきた。真っ白で口当たりの良いカップにまでセンスが感じられる。  ソファを勧められ腰を下ろすとMASAKIと向かい合う形になった。すんなりとおろせる自分の足と違って窮屈そうにしている足の長さに草太はひっそりと感嘆の息をついた。 「ではよろしくお願いします」  普段はおっとりしている猪尾がやりて営業マンの顔に変えると場は一転して真剣な空気が流れる。
/39ページ

最初のコメントを投稿しよう!