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第5章 トラブル
MASAKIの所属事務所から呼び出されたのはそれから数日後のことだった。
「え、ネット……ですか?」
前回も通された応接室に猪尾と並びながら説明を受けて、草太は眉をひそめた。
「これです」
差し出されたタブレットには賑やかな居酒屋の様子とサラリーマン二人の姿が映っている。音声は若干変わってモザイクがかかっているけど、それは間違いなく草太と元木の姿だった。
荒い画像の中で二人の人物が言葉を発する。
――誰にも言うなよ。中学の時に××将生っていたの覚えてる?
そこから始まった元木との会話は面白おかしい具合に切り取られ結びつけられていた。真実なようでスキャンダルじみた脚色を挟ませながらネットの海に広がっている。
まるで過去に将生の目の色のことが騒ぎ立てられた時のような嫌悪感に草太の背中がザワリと粟立った。
「これっ……」
動揺を見せる草太に事務所の社長は「身に覚えはあるんですね」と大きなため息をついた。
「はい。先日友人と飲んでいた時のものだと思います」
それがなぜネットに上げられ拡散されているのか草太には理解ができない。不意にあの時チラチラと様子をうかがうような店員の顔や、タイミングの良さを思い出した。きっとあいつが聞き耳を立てながら動画を撮ったのだろう。
それを説明しても、猪尾はゆるゆると首を横に振った。
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