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第6章 謝らせてくれ
何度も通った将生のマンションへの道が果てしなく遠く感じる。
電話をかけてみたが応答はなく、切り替わる留守番電話に何度もメッセージを吹き込んだ。
「今から行くから、ちょっとだけ会えないかな」
反応はない。マンションの前でもかけたがやはり繋がらなかった。もしかして本当にいないのかもしれないけど、いて欲しいと願いながらインターホンを押した。
会えるまで待つつもりだった。マンションの前の花壇に腰を掛けながら、何度も電話をかける。メッセージを吹き込む。
「将生、せめて直接謝らせて」
そうメッセージを残し、通話を切ろうとした時だった。プツっと留守電が切れ沈黙が答えた。
「将生? いるの?」
「……」
何も答えないままドアが解除された。
入っていいってことだよなと解釈して将生の部屋へと向かう。敷き詰められたじゅうたんは靴音を吸い込んで物音一つ立てない。改めて住む世界が違うことを思い知らされた。
将生はMASAKIであって、もうただのクラスメイトではなかったのだ。そのことを実感する。
部屋の前でインターホンを押すとドアが開き、前髪を長くおろした将生がそこにはいた。カラーコンタクトは外され、青と薄墨色の瞳が草太を捉える。
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